電力リミットの基準値でありCPU消費電力でもあるPPTのセンサー値は、標準状態のRyzen 9 7950Xが平均212.1Wなのに対して、Ecoモードでは平均87.4Wまで大きく低下しています。
Ryzen 9 5950Xは平均122.6Wなので、それと比べてもEcoモード適用時のRyzen 9 7950Xは35Wほど低いCPU消費電力で動作しています。

システム全体の消費電力にもCPU消費電力の差は反映されており、Ecoモードを適用したRyzen 9 7950Xが記録した平均151.8Wは、標準状態の平均312.4Wの半分以下で、Ryzen 9 5950Xの平均191.7Wより約40Wも低くなっています。

 ちなみに、標準設定のRyzen 9 7950XやRyzen 9 5950Xは、温度リミットにも電力リミットにも達していませんが、これはCPU電流値であるTDCやEDCがリミット値に達してスロットリングが作動しているためです。

システム全体の平均消費電力でCINEBENCH R23のMulti Coreスコアを割ることで求めた「1Wあたりのスコア」で、各環境の電力効率を比較してみました。

 標準状態のRyzen 9 7950Xは「121.6」で、Ryzen 9 5950Xの「130.4」を下回っていますが、Ecoモード適用時は「197.8」で傑出しており、その電力効率は標準状態の1.6倍以上、Ryzen 9 5950Xの1.5倍以上にまで上昇しています。

 CPUには動作クロックが高くなるほど必要電圧が高くなる特性があり、限界に近い高クロック動作になるほど電力効率が悪化してしまいます。
標準状態のRyzen 9 7950Xは性能優先で5GHz以上の高クロック動作となっていますが、これが電力リミットによるスロットリングで約4GHzまで低下した結果、電力効率が大きく改善したというわけです。

3DMark「CPU Profile」テストでスレッド数毎のパフォーマンスをチェック
 最後に、3DMarkのCPUテスト「CPU Profile」を実行した結果を紹介します。
CPU Profileは、処理に使用するCPUのスレッド数を変更しながらパフォーマンスを計測するテストで、CINEBENCH R23のMulti CoreとSingle Coreの中間の負荷がCPUに生じたさいのCPU性能を知る手がかりになります。

 ベンチマークスコアをみてみると、標準設定のRyzen 9 7950XがMaxスレッドや16スレッドで抜きんでたスコアを記録している一方、8スレッドあたりからはEcoモード適用時との差が縮まり、4スレッド以下では同等になっている様子がみられます。

標準設定のRyzen 9 7950Xを基準に指数化したのが以下のグラフですが、Maxスレッドや16スレッドでは標準設定の77~82%の性能しか発揮できていないEcoモード適用時のRyzen 9 7950Xが、8スレッドでは約93%の性能を発揮し、4スレッド以下では同等のパフォーマンスを発揮していることがわかります。

この結果は、Ecoモードが電力や電流のリミット値を引き下げているだけだからこそ生じる現象です。
これら引き下げられたリミット値に達すれば、スロットリングが作動してクロックや電圧の引き下げが発生してCPUの性能は低下しますが、逆に電力や電流のリミット値に達しなければ、標準動作時と同じようにブースト動作が維持されます。

 多くのCPUコアがフル稼働するような高負荷時の最大電力をカットしつつ、ゲームなど中程度のCPU負荷が生じる場面でのパフォーマンスは高く保てるというのがEcoモードの面白いところです。

CPUの性能を好きなときに縛ったり開放できたるEcoモード
自分の都合のいい設定でCPUを利用できるのは自作PCならではの魅力

Ryzen 9 7950Xがブースト動作によって発揮するマルチスレッド性能は素晴らしいものですが、その代償として生じる消費電力と発熱は大きなものです。

 この消費電力と発熱に対応できる環境を用意して、最大限にその性能を引き出そうとするのも自作PCユーザーの腕の見せ所ではありますが、今回試したEcoモードのように電力リミットをチューニングして自分にとって都合の良いCPUとして活用するのもまた、自作PCならではの使い方であると思います。

 せっかくの高性能CPUを絞って使うなんてもったいないというご意見もあるとは思いますが、普段は静粛性と電力効率に優れた状態で使いつつ、必要な時にはファンスピードや電力リミットを開放して驚異的な性能を発揮するというのは、なんだか心の奥底の何かがくすぐられるような運用なのではないでしょうか。