今や日本の一大産業にまで成長したゲーム産業。
しかし、華やかな表舞台の裏には必ず陰が存在するものである。
技術の盗用、インサイダー取引、他社へのネガティブキャンペーン。
そんな闇の部分の中でも、業界人から特に恐れられていた存在、
通称"壊し屋"と呼ばれる闇のゲームクリエイターが、この世には存在していた。

彼はターゲットとなるゲームを最低でも94.4時間以上はやりこんだ後、
ゲーム会社へと潜入し開発室内での立場を徐々に高めていく。
そうして調整の主導権を握る立場にまで昇りつめた後で、
今までのバランスを破壊する調整を行ってゲームを"壊す"。
彼によって破壊されたゲームは数えきれないと言われている。

これだけでは"壊し屋"はただのゲーム嫌いなようにも見えるだろう。
しかし、それは間違いである。彼はゲームを誰よりも愛している。

面白いゲームを作りたい。

彼も最初はただそれだけを願う純粋なクリエイターだった。
しかし現実は厳しく、予算や人員、納期といったあらゆる要因により、
満足いくゲーム作りはできなかった。もっと予算があれば。時間があれば。
本来の実力が発揮できれば、誰よりも面白いゲームが作れるはずなのに。
彼は悔しさに震え、抗った。もがいた。いくつもの会社を転々とした。

それでも、何も変わらなかった。

変わり映えのしない日々。無力感。客からの心のない言葉。
もはやゲームとは呼べない、不完全な商品未満の"モノ"に対する怒り。
いつしか彼は純粋な気持ちを忘れ、自らの力を負の方向へと使い始めた。

こんな面白くないゲーム、続ける意味なんて「ないです」。

「どうすれば客が喜ぶか」。そのことをただひたすら考えていた彼にとって、
その逆である「どうすれば客が嫌がるか」を実行することは造作もないことだった。
ゲームを知り尽くし、愛しているからこそできる、完璧な破壊。
プログラムを走らせ、世界に終末に告げるラッパの音を響かせる。
いくつもの世界を滅ぼし、気が付くと彼は"壊し屋"となっていたのだった。