その後も、壊し屋はなんとかゲームを壊すべく調整を続けた。

バランス調整という名の停滞。使いまわしの実装。
さらには生放送に出演し、誤った情報を流すという奇策。
彼はもがいた。必死だった。だが――

2018年8月23日、CEDEC2018。

この日、彼は壊し屋としての自分が死ぬのをはっきりと感じた。
目の前で繰り広げられる、圧倒的な内容。王の所作。
自分では決して届かないであろう境地を前に、彼は全てを悟っていた。

勝てない……。

心から受け入れた、自らの敗北。
おそらく、前任者とやらもアレにやられていたのだろう。
当然だ。所詮、壊し屋といえどもゲームクリエイター。

だが、アレはゲームクリエイターじゃない。否、人間ですらない。

その目はオフイベだけを見据え、心は幻想の王国にのみ存在する。
不遜なる"王"。それに付き従うは木で出来た道化に、青白き影。無数の魚。

(限界、か……)

携帯を取り出す壊し屋。
幾度となくかけたその番号にかけると、彼は穏やかな口調でメッセージを残した。

「……さんっ!」
「えっ?」

ふと、壊し屋は自分が呼ばれていることに気が付いた。
どうやら、昔の事を考えていて少しぼんやりとしていたようだ。

「ちょっと〜、生放送なんすから、しっかりして下さいよ〜w」
「あぁ、そうですね。すみません」

苦笑する壊し屋。
だがすぐに気が付く。

自分は、もう壊し屋ではない。

あの日。依頼を断念するとクライアントに伝えたあの日。
壊し屋としての自分のキャリアは、完全に終わりを迎えたのだった。
この世界は結果が全て。今後、自分に壊し屋としての依頼が来ることはないだろう。

「じゃあ、新年なんで〜w 今年の抱負とかどうっすか?w」

だが、壊し屋の心は不思議と穏やかだった。
壊し屋としての自分を失った今、残っているものは一つだからだ。

「抱負ですか? そうですね……」

そう、今まで決して変わることのなかった、たった一つの想い。

「……面白いゲームを作る、ですね」

壊し屋としての仕事から解放された彼は、そう言って穏やかに微笑むのだった。