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「軌道角運動量(OAM)」の活用:光の偏光を用いた旧来の手法の限界突破
これまで、光子を用いた量子情報実験の大半は、光の「偏光(polarization)」という性質を利用して行われてきた。偏光は、光の波が振動する方向(例えば水平と垂直)に基づく性質であり、2つの異なる測定結果が得られるため、Qubitを表現するのに非常に適していた。TU WienのNicolai Friis氏が「南北に歩くか、東西に歩くかの選択のようなもの」と例えるように、偏光は扱いやすい一方で、本質的に2次元の自由度しか持たないという限界があった。
そこで研究チームは、光子の空間的な波形、具体的には「軌道角運動量(Orbital Angular Momentum: OAM)」という全く異なる自由度に着目した。光のOAMとは、光波の位相面が進行方向に向かって螺旋(らせん)状にねじれて進む性質のことである。このねじれの度合い(方位量子数 ℓ で表される)を変えることで、無限に多くの異なる直交状態を作り出すことができる。これは、螺旋階段の傾斜の急さや回転方向が一段ずつ異なる状態を想像すると分かりやすい。
本研究において、研究チームはこの無限の可能性の中から4つのOAM状態(ℓ = -2, -1, 0, +1)を計算の基底状態(それぞれ |0⟩, |1⟩, |2⟩, |3⟩ に対応)として選び出し、4次元のQuditを構築した。Friis氏の言葉を借りれば、「南北と東西の方向に加えて、さらに2つの新しい座標軸にアクセスできるようになった」状態である。これにより、従来の偏光を用いたQubitでは不可能だった、多次元空間における複雑な量子状態の重ね合わせと制御が実現したのである。