>>1の本文
物理学の多くの場面で「陽子はどれくらいの大きさか」という数字がそっと組み込まれているからです。
陽子のサイズは物理学という学問全体にとっての「基本の計量スプーン」のようなものなのです。

中略

 電子で測ろうがミューオンで測ろうが、理論上はまったく同じ陽子を測っているのですから、答えは一致しなければおかしいからです。
 これは「どちらかの実験か、あるいは計算のどこかに未解決の見落としがある」か、あるいは――もっと恐ろしい可能性として――「電子とミューオンで陽子の見え方が違う」という、私たちの知らない新しい物理法則が陽子のまわりにこっそり潜んでいることを意味しているかもしれませんでした。
★物理学の基礎の基礎たる「陽子の大きさがわからない」という状態について、物理学者以外の人はそれほど危機感はないかもしれません。

中略

物理学者にとってそれは、レシピ本の土台である「小さじ1杯」の目盛りが揺らいでしまうのに等しい、無視できない事態だったのです。
ここから「陽子半径パズル」と呼ばれる物理学の大論争が始まったのです。

中略

陽子のサイズを測る舞台は、いま2つあります。
「普通の水素」で得られた値と、「ミューオン水素」から得られた値です。
この食い違いをどう解消するかが、その後15年の物理学の宿題となりました。