手がかりになったのが「エントロピー」でした。
先ほど、物理法則の多くは時間の方向を区別しないと書きました。
しかし実は物理学の中にたったひとつだけ、時間の方向を教えてくれるものがあります。
それは「この宇宙に埋め込まれた基本法則」で、それは「固まっていたものが散り散りになっていく」という現象です。
たとえば空気中に1カ所だけ酸素が特に濃いポイントを設定すると、時間と共にそこにあった酸素は周りの空間に広がっていきます。
「そんなの当たり前」と思うかもしれませんが、物理学者はこの現象が取るに足らない常識ではなく、私たちの宇宙に埋め込まれたどうしようもない基本法則であると考えています。
「当たり前をこれ見よがしにあげつらって基本法則と呼ぶ」という態度こそが、物理学の根底に流れているスタンスだからです。
そして物理学者は散らばりの度合いを「エントロピー」という数値で表現します。