太陽の数百万倍から100億倍の質量を持つSMBHが、どのようにしてその巨大な質量を獲得したのかは未解明である。この謎を解き明かすには、SMBH近傍での物質の運動と、それが飲み込まれていく過程を理解する必要がある。しかし、SMBH近傍での物質の運動は、一般相対性理論が予言する強い重力や時空の効果が大きく影響する。つまり、SMBHの成長の仕組みを理解するには、一般相対性理論の効果も含めた上で近傍物質の動きを知ることが不可欠だ。
その鍵となるのが、鉄原子から放たれる「特性X線」だ。SMBHへと落ち込む過程で、降着円盤内のガスは極めて高温になる。その際に放たれる強いX線が周囲の物質中の鉄原子を照らすことで放出されるのが、特性X線である。降着円盤の回転によって領域ごとにドップラー効果が働き、重力や物質の動きもあって特性X線のエネルギーは変化する。その変化を正確に計測することで、SMBH周囲の物質の運動を調べられるようになる。特に、特性X線の低いエネルギー側に広がった成分は、SMBH近傍を高速回転するガスから出た光が、強い重力やドップラー効果によってゆがめられたものとされる。このような成分を詳細に調べれば、降着円盤の構造を探れる可能性がある。