>>//電力は余り、水が制約を握る
>>宇宙での居住を考えるとき、水と並んでエネルギーの確保が課題に挙がる。地球上の大都市を支えるには膨大な電力が必要であり、月面でも小型原子炉の導入などが議論されてきた。しかし、Elvisらの計算は月面において電力が制限因子にならないことを示している。
>>先述の通り、月の自転軸の傾きはわずか1.5度だ。そのため極域のクレーターの縁など標高の高い場所では、太陽が地平線を這うように動き、ほぼ常に日光が当たる「永遠の光の峰(Peaks of Eternal Light)」と呼ばれる領域が存在する。月面は重力が地球の6分の1と小さく、構造物を破壊する強風も吹かない。したがって、高さ1キロメートルを超える巨大な太陽光発電タワーの建設も不可能ではない。研究チームの推計によれば、これらのタワーを設置すれば約3 GW(ギガワット)の電力を安定して供給できる。
>> 3 GWという電力は、地球上の原発数基分に相当する。これだけあれば、100万人の居住施設のほか、エネルギーを大量に消費するデータセンターや工業施設を稼働させても電力が余る。太陽電池の材料となるシリコンも、月面を覆う砂であるレゴリスに豊富に含まれている。電極となるアルミニウムや鉄も抽出できるため、重い太陽光パネルをわざわざ地球から運ばず、現地で自己増殖的にパネルを生産する道も開けている。
>>電気は潤沢に作れる。だが、水は増やせない。水素と酸素を結合させて水を作ることは物理的には可能でも、その原料となる水素をどこから調達するかという問題に行き着く。月面の資源を利用する「ISRU(その場資源利用)」の枠組みの中で、電力と水の間には埋めがたい非対称性が存在している。