◇人間が量子テレポーテーションの仕組みを利用してのテレポート技術をどうやって生身で行えるのかの問題になっている

「100画素」を一度に量子テレポーテーション、光の並列制御で古典限界を突破
中国の研究チームが光学実験台上で100個の空間モードを用いた並列量子テレポーテーションを実証した。平均忠実度0.60を記録して古典限界の0.52を突破し、全光学的フィードフォワードによる大容量インターフェースの実行可能性を示している。
2026年9月17日
https://xenospectrum.com/hundred-channel-quantum-teleportation-prl/
//空間光変調と全光学的フィードフォワードが切り開いた並列化の構造
量子テレポーテーションの物理原理は、1993年にチャールズ・ベネット(Charles H. Bennett)らが理論的に提案した枠組みに遡る。送信者と受信者が、あらかじめ量子力学的にもつれた状態にある粒子ペアを分け合い、送信者が手元の未知の量子状態ともつれ粒子を組み合わせて共同測定を行う。その測定結果を古典的な通信経路で受信者に送り、受信者が結果に応じて手元の粒子に適切なユニタリ変換を施すことで、元の未知の状態が受信側で復元される。
従来の実験が直面してきた最大の制約は、チャネルの多重化に伴う装置の大規模化であった。量子チャネルを1つ増やそうとすれば、それに対応するもつれ光子源、光検出器、高速電子処理回路、そして光変調器を丸ごと1系統追加しなければならない。これに対してJing教授らのチームは、空間的な光波面のパターニング技術を取り入れることで、100系統のチャネルを単一の光学系内でまとめて処理する構造を設計した。
この並列光学アーキテクチャの工程は、大きく4段階に整理できる。まず約1 Wの励起レーザー光源から出た光を、重み付きゲルヒベルク・サクストン(Weighted Gerchberg-Saxton)アルゴリズムに基づく位相ホログラムを表示した空間光変調器(SLM)へと導く。SLMはこの単一ビームを、10行10列の格子状に並ぶ100個の独立した空間モードへと変換する。次に、この100本の空間チャネルに入力信号(文字「Q」の形状に対応する振幅側と位相側の直交成分)を担わせるとともに、あらかじめ用意された100対のもつれ光場ペアと結合させる。
続く操作が、電子回路を介さない全光学的フィードフォワードである。送信側で光を検出して電気信号へ変換することなく、光波同士の直接干渉によって100チャネルすべてのフィードフォワード操作を一括して実行する。最終的に、受信側の光学系では、100画素それぞれに対応する光電場の量子状態が忠実度を保ったまま復元される。
このシステムを支える要素は二つある。第一は、重み付きゲルヒベルク・サクストンアルゴリズムに基づくホログラフィック技術である。空間光変調器と呼ばれる液晶デバイスに計算された位相パターンを表示し、そこへレーザー光を通すことで、10行10列の格子状に並んだ100個の独立した空間モードを作り出す。これらのモードは、同一ビーム内で周波数などを重ね合わせる従来の多重化とは異なり、空間的に分離された100本の独立チャネルとして振る舞う。
第二の要素は、「測定を伴わない全光学的フィードフォワード(measurement-free all-optical feedforward)」の実装だ。通常の連続量テレポーテーションでは、送信側でホモダイン検波を行い、得られた電流信号を電子アンプで増幅して受信側の電気光学変調器を駆動する。しかしチャネル数が100に達すると、100系統の高速検出器と電子回路を並行して動作させるための配線や同期が大きな負担となる。研究チームは、光波同士を直接干渉させて位相と振幅を結合する光学系を構築し、電子的な処理を介さずに100個の空間モード全体に対するフィードフォワード操作を一括して行った。
Jing教授はIEEE Spectrumの取材に対し、従来のテレポーテーションが1度に1つの量子状態しか送れなかったことに触れ、大規模ネットワークを実現するには「多数の量子チャネルを同時に生成し、整合させ、操作する技術」が必要だったと述べている。本実験で扱われたのは、単一光子の有無でビットを表す離散変数(DV)ではなく、光波の振幅側と位相側の直交成分という連続量(CV)の物理量である。光電場が持つ微小な揺らぎの状態そのものが、100本の並列光チャネルを通じて転送された。