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//実装を阻む1ワットの壁と検証すべき課題
実験室で得られた成果が、直ちに実用的な量子通信インフラへとつながるわけではない。著者ら自身も論文の考察において、現行システムの物理的な限界を率直に認めている。
★100チャネルという配列規模の上限を決定づけた最大の要因は、光学系を駆動するために使用できるレーザー出力にあった。本実験で使用された励起用レーザーの出力は約1 Wである。空間光変調器によってビームを100個の微小なスポットへと分割し、それぞれで非線形光学効果による十分な量子もつれを発生させるには、光の強度が各チャネルに分散されることが大きな制約となる。チャネル数をさらに増やすには、より強力なレーザー光源と、分割された微弱光を高忠実度で増幅する低雑音光増幅器の開発が避けられない。
★Jing教授はIEEE Spectrumに対し、研究チームが現在、より高出力のレーザーと高性能な光増幅器を導入することで「1,000チャネルのシステム構築を目指して取り組んでいる」と明かした。ただし、これは研究チームのロードマップ上の目標であり、1,000チャネルでの動作がすでに確認されたわけではない。チャネル数が10倍になれば、光学素子の収差、熱レンズ効果、空間モード間のクロストーク(混信)といった幾何光学・波動光学上の問題が非線形に増大する。
★さらに、実験環境についても冷静な見極めが必要である。本研究で行われたすべての測定は、振動や温度変化の影響を高度に抑えた実験室の光学定盤上で行われた。大気中を長距離伝播する自由空間リンクや、敷設された光ファイバーケーブルを介して100個の空間モードを歪みなく伝送する実験は含まれていない。光ファイバー内で複数の空間モードを伝送するマルチモードファイバー通信では、モード間の分散や結合が避けられない。これらを補償しながら量子状態を維持する技術は、いまだ十分に確立されていない領域である。
学術的な検証の観点からは、前述の通り、詳細な生データや補足資料の閲覧には学会の購読契約が必要という情報アクセス上の制約がある。加えて、本成果は現時点ではJing教授らのグループによる単一の実験報告であり、独立した他の研究グループによる追試や再現性の確認はまだ行われていない。
連続量量子テレポーテーションにおいて、100個の空間チャネルを全光学的に並列制御できる手法が確立されたことは、大容量の量子インターフェース実現に向けた有力な一歩である。しかし、それが実用的な量子中継器や都市間量子ネットワークの端末として稼働するためには、励起光強度の制約の克服、長距離伝送路における波面乱れへの対応、そして第三者による測定結果の再現という複数の関門が残されている。