マウスの大脳皮質の9割以上を「ヒトの脳組織」に置き換えることに成功
公開日2026.09.19 17:00:19 SATURDAY
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/199917
★統合失調症やてんかん、自閉症のように、生まれる前や生まれた直後の配線の乱れが関わるとされる病気ほど、この壁は高くなります。
ヒトの皮膚の細胞を幹細胞に変え、そこから育てた小さな立体の脳組織は「オルガノイド」と呼ばれ、いまでは発達中のヒトの神経系にある幅広い細胞がそろいます。
研究チームは、大脳皮質と海馬になるはずの「もとの細胞」だけが持つ目印を手がかりに、細胞分裂に欠かせない遺伝子を働かなくしたマウスを作りました。
分裂の途中で細胞が死ぬため、大脳皮質と海馬の大部分は、そもそも作られません。
大脳皮質といえば、思考や言語、注意、判断といった高度な働きを担う、脳のいちばん外側の「皮」です。
今回の研究では、生後1〜2週の時点で、この脳が欠けている赤ちゃんマウスの空洞に、およそ10万個の細胞を含むヒトのオルガノイドが、左右の半球に2個ずつ、合わせて4個植えこまれました。
さらに3か月後には、そのマウスの大脳皮質にあたる組織の体積の91.9%が、ヒト由来のものになっていました。
頭蓋骨を透明にして光で覗くと、移植片の表面全体を100ミリ秒ほどで駆けぬける活動の波が見えました。
ヒトの組織は、マウスの脳の他の部分との連携も進んでいました。
大脳皮質が体に命令を出すとき、その信号は皮質から下へ向かう長い線維の束を通り、背骨の中の脊髄まで降りて、そこで次の神経に乗り換えて筋肉に届きます。
そこで研究チームは、ヒトの細胞だけを光らせて、接続の様子を調べてみました。
すると、調べた3匹すべてで、ヒト由来の神経の突起がマウスの首の高さの脊髄まで届いており、脊髄の細胞を取り囲むように点々と信号が並んでいました。
一方で、皮質がそのまま残っているマウスに同じヒト脳オルガノイドを移植した場合、脊髄には何も見つかりませんでした。
培養皿では誰も作れなかった細胞が、そこにいた / Credit:Developmental xenocortication using human-derived organoids in mice
一つは、大脳皮質から神経系の遠く離れた場所まで長い突起を伸ばす種類の神経細胞(第5層の大脳外投射ニューロン)で、これまでの移植方法に比べて3倍以上の割合を占めていました。
大きく、細長く、葉巻のような形をした神経細胞で、ヒトの大脳皮質では9万個に1個ほどしかありません。
★社会的な気づきや判断に関わる領域に集まっており、類人猿やゾウ、イルカ、クジラなど大きな脳を持つ社会性の高い動物にも見つかっていますが、マウスやラットにはありません。
★ヒトでこの細胞を観察するには、亡くなった人の脳か、手術で取り出されたわずかな組織に頼るしかありませんでした。
培養皿のオルガノイドでこの細胞が作られたことは一度もなく、以前のラットへの移植でも検出されていません。
★しかもまわりの細胞の直径が9マイクロメートルほどなのに対し、こちらは約30マイクロメートルもあります。
VENは前頭側頭型認知症で特に減りやすいことが知られており、この病気では、記憶の問題がはっきりしてくるより前に、社会的なふるまいや性格の変化や、言葉の使いにくさが初期の症状として現れることがあります。
★パシュカ氏は「患者さんから皮質オルガノイドを作り、マウスに搭載することで、この希少な細胞を守れるかどうかを確かめられます」と述べています。
ヒト脳オルガノイドを移植されたマウスたちは、この低酸素のために、歩行検査で足の運びと支えかたに乱れが出たことが示されました。
一方で、ふつうのマウスと無皮質マウスは、同じ低酸素にさらされても歩き方をほとんど変えませんでした。
★ヒトの組織が傷ついたマウスだけが、歩き方を変えたのです。