>>27 続き

遺伝子と環境の相互作用
このほか活動が変化していた遺伝子には、以前からうつ病との関連が指摘されてきた遺伝子変異をもつものが含まれていた。また別の遺伝子は、環境要因を反映しているとみられるエピジェネティックな変化の影響を受けていた。ここでのエピジェネティックな変化とは、DNAの配列そのものを変えることなく遺伝子がどれだけ強くオン・オフされるかを調整する働きを指す。
「これは遺伝子の活動を調節する調光スイッチのようなもので、ストレスや学習、加齢、化学物質といった生活経験の影響を受けます」と、デュポンは語る。「こうした幅広い影響は、異なる発症メカニズムを反映した結果かもしれません。つまり、うつ病はひとつの病気ではないかもしれないということです」
このように分子レベルでの多様な変化は、うつ病が人によって異なる様相を示す理由になりうる。デュポンによると、うつ病の根底にある生物学的な仕組みについては、いまだ限定的にしか理解できていないという。うつ病を細胞・分子レベルでより精密に定義できれば、新たな治療方法が確立できるかもしれないのだ。
研究チームは今後、うつ病を分子的特徴に基づいて再分類することを目指している。「がんを発生部位ではなく細胞レベルの特徴によって分類するようになったことで、より優れた治療法が生まれました」と、デュポンは語る。「うつ病をはじめとする精神疾患や脳疾患でも、同じことが起きると期待しています」