>>今回の研究で注目すべきなのは、電子スピンが生み出す微小な力を、従来よりはるかに重い物体に作用させ、その動きを直接観測した点だ。
>>研究を主導したのは、OIST量子マシンユニットのジェイソン・トゥワムリー(Jason Twamley)教授らのチームだ。論文には、筆頭著者のアンシュマン・ナヤック(Anshuman Nayak)氏、キム・デヒー(Daehee Kim)氏、東京科学大学にも所属するティアン・シル(Shilu Tian)氏が名を連ねている。
>>OISTの公式発表では、電子スピンの力によってセンチメートル級の物体を動かした世界初の観測として紹介されている。
>>論文によると、実験に使用した振動子の総質量は128mgだった。OISTのトゥワムリー教授は、これが従来の最先端のスピン力学実験で扱われてきた物体より8〜9桁、すなわち1億〜10億倍も大きな質量に相当すると説明している。
>>従来は、極めて軽い粒子や微細な機械構造を使い、量子スピンと運動の関係を調べる研究が中心だった。これに対して今回の研究では、最初から比較的大きな物体を空中に浮かせ、そこに電子スピンの力を作用させる方法を採用した。
>>物体を徐々に大型化するのではなく、巨視的な物体に微小な力を作用させるというアプローチだ。
>>もっとも、実験対象は研究室内に設置された精密な装置であり、人体や生体を動かしたわけでも、屋外での応用試験が行われたわけでもない。
>>今回の成果は、厳密に制御された実験環境で、電子スピンに由来する力によって128mgの振動子を動かせることを示した基礎物理学の実証実験と位置づけられる。