パニッシュシスターさんとなら地獄の底でも共に歩きたい。
「ミスタルシア、終わるらしいですよ」
帝都の教会での月次報告を終え帰宅するなりパニシスさんはつまらなそうに言った。パニシスさんはこちらを見ない。
「騎士様でも止められなかったそうで。もう今度こそ本当に終わりですよ」
毎巡りの風物詩だよまた騎士様が何とかしてくれるよと言うとそう返された。パニシスさんはこちらを向かない。
「あーあ、今からじゃ試練越えても改宗手続きが間に合いませんね。残念、貴方は地獄行きって訳です」
いつもの嘲るような調子なのに今まで聞いたことがないようなか細い声で笑う。パニシスさんは振り向かない。
「貴方は地獄、私は当然天国。この村にもつい長居してしまいましたが、今度こそ本当のお別れですよ」
どうやら本当に終わりなんだと悟って素直に辛くて悲しいと告解する。パニシスさんは取り合わない。
「ようやくミスタルシア消滅と自分の死が実感できましたか。そんなときの救いこそ信仰なのに私の言うことを聞かないから」
そうじゃなくて貴女に会えなくなるのが辛いんだと正直に白状する。パニシスさんが今日初めてこちらを向いた。
「自業自得ですよ。改宗したら私がいなくなる、とか勝手に思い込んで逃げ回ってたのが貴方の最大の罪ですね」
いつもの困ったように眉を下げた笑顔で、今まで見たことがないくらい大粒の涙を零していた。
「残念ですがもう楽しい夢はお終いなんですよ。せっかく天国が待ってるのに最悪の気分じゃないですかどうしてくれるんですか」
ごめんなさいでもこの7年本当に楽しかったありがとうと伝える。パニシスさんは睨むのをやめない。
「『ありがとうさようなら』じゃないですよ。だからさっさと改修しなさい地獄に堕ちますよ、とあれほど言ったじゃないですか」
地獄でも貴女がいれば耐えられそうだと冗談を言う。パニシスさんは途端に顔を赤くしただけで笑わない。
「……まあ。ミスタルシア消滅の回避も、今から貴方が天国へ行くのも不可能ですけど」
改めて言われると余計に実感が湧いてきて落ち込む。パニシスさんはまたそっぽを向いて眼を合わせない。
「私が地獄へ行くことは可能なんですよねえ。信仰を捨てるとか純潔を捨てるとか司教を縊り殺すとか」
なんだか恐ろしい発言だけどこの人には天国とかお隣とかお空とか来世とかで活躍してほしいので止める。パニシスさんは意に介さない。
「そうですね、いい機会だからやっちゃいましょうか。向こうでも獄卒と一緒に試練を与えてあげますよ」
パニシスさんはあのいつもの嗜虐的な眼差しと今日初めての笑顔を見せながら言う。こうなるとパニシスさんは止まらない。
「大丈夫。痛みも救いです。つべこべ言わず大人しく跪きなさい……それとも、私と永遠に一緒は嫌だとでも?」
嫌も応もない。
パニッシュシスターさんとなら地獄の底でも共に歩きたい。