今、俺(しりり)には人に相談できない悩みがある

一度会話をして以来、ふと背中に誰かの視線を感じて振り向くとそこには必ず深淵の姿があった
俺と目が合ったことに気付くと深遠は決まって微笑む、いや微笑もうと努力する
だがそれはなんという笑顔であっただろうか
顔の右半分をMウイルスに侵されているせいか、それともほぼクラス全員から無視される日々が
あまりにも長く続いたせいか
それは笑顔と呼ぶにはあまりにもぎこちなく、ふだん人前で笑うことに慣れていない陰キャ特有の
衰えた表情筋による痙攣としか言いようのない不気味な代物だった

人づてに聞いたところによると、あれ以来深淵は俺と付き合っていると周りに吹聴していたらしく、
それが原因で何日か前にはれむっふをアタマに据えた上位カーストの女子たちに呼び出されて
校舎裏でボコボコにされたという噂まで耳にした
実際ここ数日深淵は学校を休んでいる…それなのに、今こうして背中に視線を感じて振り返ると
あそこの物陰に身を潜めるようにして、包帯と絆創膏だらけの顔にあの表情を浮かべながら…
深淵もまたこちらをのぞいている――――。