寒い…深夜0時を回ってとうに2時を回ったこの時間、外が寒いことなどわかってはいたが
面倒がっていつものジャージ姿で出たのが悪かったのだろう、そんな自分を罵りたくなる
そもそもこんな時間に外に出るはめになったのはいったい誰のせいだっただろう
叶と二人でゲームをしていて自分の欲張りで負けたとはいえ
罰ゲームと称してなにもコンビニに買出しに行かせることなどないだろう

仮に自分ひとりだったなら何の問題もなかったのだが
自分の横にいる一人の少女…いや女性、本間ひまわりの存在が問題である
叶の罰ゲームと称したパシリにわざわざついて行きたいと彼女から言われたのである

欲しい物があるならついでに買ってくると言ったがそれでもついて行きたいと言われたならしょうがない
特に断る理由もなく彼女の同行を許可したものの、こうして実際に外に出てから多少後悔をしている
彼女は自分と違って着込んでいるが、それでも顔や手は外気に晒されており寒いものは寒いのだろう
寒いとは口に出さなくともいつもは大きく開いている口は閉じ、吐息は白く、しきりに手をさする様子から察せる

相手が叶であればそのまま寒がらせておいたであろうが
自分の隣で言葉に出してはいないが間違いなく寒がっているのは友人のそれも女性である
そのままにするというのは気分のいいものでは決してないし、ブタに叱られるだろう
コンビ二までは歩いて3分ほど、コンビニに到着すれば温かいものが何かしら買えるだろうがそれまでの間をどうするか
上着を着ていれば彼女に渡せたのだろうがあいにく今はいつものジャージ姿、残念ながらそんな気の利いたことはできない

いつも通り他愛も無いことを話しながら解決策を考え歩く
ポケットにいれていた自分の手、そこまで温かくは無いが外気温よりはましだろう
そう思い女性と手を繋ぐ可能性に気恥ずかしさを覚えつつも立ち止まり自分の骨ばった手を差し出す

「まっさん、手ぇ繋ぎません?片方の手だけでも寒いの多少はましになると思うんで…嫌だったら全然かまわないんすけど」

そう伝えると彼女は驚いた様子でこちらを見上げる
流石に馴れ馴れしかっただろうか、数秒ほどこちらを見上げる彼女を見ながら不安に思っていると
彼女はおもむろに差し出した手をつかみ一言

「ありがとう」

そう言って彼女は一回りほど小さく柔らかな手で自分の差し出した手を力強く握り締めた
手を繋いだもののお互い無言の時間が続いてしまう
さてどうしたものかと考え歩いているとふと彼女が

「葛葉の手は冷たいけど温かいね」

と不思議なことを呟くように言った
もしかするとこちらに聞かせる意図は無く実際に呟いていたのかも知れない
ただ時間は深夜2時過ぎ周りは車もあまり通らず雑音は無いまた自分は吸血鬼故に耳も多少は良い
どうしても聞き返してしまった

「手が冷たいのに温かいってどういうことっすかまっさん」

「んーとね、秘密!」

彼女はいつものひまわりの様な笑顔でそう言った
はぐらかされたのは何となくわかるが彼女の様子からして悪い意味ではないだろう
ならば、特に追求するようなことでもない
そろそろコンビニに着く
帰り道ではおそらく手を繋ぐ必要はないだろう
そう思うとなんだかコンビニに着くのが惜しく感じてしまった