>>731
樋口楓はいつものように電車に乗って帰宅する途中だった。
上京し都内で暮らすことになってもう数か月になる。

慣れ浸しんだ車内だったが、二つ気になっていることがある。
数時間前まで送られてきていた月ノ美兎からのDMの返信が届かない。

こちらから送っても、既読になるものの、返事は無い。
本来ずぼらな彼女であるので大したことでは無いが、何かあったのかと少し不安になる。

そしてもう一つ。
途中で乗ってきた、数人の男達がいる。
それだけならば、特におかしなことでは無いが、その位置が不自然だった。
窓際に立つ樋口楓を、まるで囲むようにしているのだ。
これが朝の通勤ラッシュ時等であればまだわかるが、今は正午を少し過ぎた程度。
車内の乗客はまばらで、空席が殆どだ。

それなのにこの距離。
しかも男達からは樋口楓の肢体に絡みつくような視線が注がれており、非常に居心地が悪い。
それでも、やや人見知りな樋口楓は降りる駅までの辛抱と、視線を合わせないようにと俯いたまま電車に揺られていた。

突如、樋口楓はお尻に違和感を覚えた。
「(ちょっと、当たっとんやけど…)」

軽く咳払いをして、小さく腰を揺する。
しかし、腰に当たる違和感は、離れるどころか、より強く存在感を示し始める。
カバン等の物では無い、明らかに人の手だ。

「(も、もしかして、痴漢!?)」
これが満員電車の狭い車内であれば、偶然手が当たっているということも考えられる。
しかし、この現状では、明らかに故意としか考えられない。

生まれて初めての性的な悪戯に、樋口楓は恥ずかしさと恐怖で身を竦ませる。
樋口楓の尻に張り付いた男の手は、腰のラインを確かめるように動き始める。
お尻から手を引き剥がそうと大きく腰を揺さぶる。
しかし、張り付いた手は一向に離れる様子が無い。
それどころか手を指を広げ、指を食い込ませて大胆に樋口楓のお尻をまさぐり始めた。