「よりにもよって深淵なんかと……しりり君もずいぶん落ちぶれたものれむねぇ。」
その言葉に反応して弾かれたように深淵が顔を上げる
破面した右目の底で何か無数の細かく黒いものが一斉にザワザワと蠢き出した
なんだか知らないが間違いなくMウイルスを撒き散らすヤバい「モノ」に違いない
(とりあえず俺の部屋ではやめてくれ……)

立ち上がったしりりがれむっふの頬を打ち、薄暗い室内にパンッと乾いた音が響く
「……俺は『やめろ』と言った。」
一瞬、大きく見開いた目で驚いたように自分を打ったしりりを見返したれむっふは
打たれた頬を手で押さえるとそのままその場にへたり込んだ

「なんで、れむのことぶつの……?」
「れむちゃはいつだっていいこだったでしょ?偽NYNを使った動画が伸びたときは
ちゃんと禊動画作ってごめんなさいしたし、頭わるわるが便乗ホモガキの食い物に
されそうになったときだって動画スレのみんなが消せっていうから消したのに……」
「投コメだってちょっとキツすぎかな?って思ったら次からはちゃんと気をつけて!」
「れむちゃ何でも言うこときくから叩かないで!れむちゃのことぶたないで、お願い」

その場に突っ伏して、まるで幼児退行したかのように身も世もなく号泣するれむっふ
かつてはしりりに次ぐ人気を得ていた動画投稿者、だがその実態は叩かれたくない
一心から、まわりの顔色を伺い続けることを強いられる犠牲者でもあったのか……
過去にどんな事情があったのかは知るべくもない――――。

手首にあてがったオルファを取り落とし、つと立ち上がってれむっふに寄り添う深淵
憎い恋敵ではあっても彼女もまたその心に深い闇を抱えていることを知った深淵は
れむっふを打ったしりりに対して非難のまなざしを向け、キッと睨み付ける
(ええ……なんか俺、悪者にされてる?…何これ、何なの、何で。)

手早く着衣を済ませた深淵がまだ幼児のようにグズり続けるれむっふを助け起こす
気まずい空気の中、暇乞いをする深淵と支えられるようにして立つれむっふの姿を
放心したように眺めるしりり
(深淵は微乳ながらも美乳、しかしこうして並べてみるとやっぱりれむっふのほうが)
その目は肩掛けカバンをたすき掛けにしたパイスラ状態のれむっふに釘付けだった