あれ以来、自室に引きこもり愛用のテレキャスを抱えて攻撃的なフレーズをかき鳴らすだけの日々を送るしりり
憔悴しきったその姿にはかつてク☆動画投稿者の頂点として君臨していた頃の面影はない

最初の「ピン」とそれに続く「ポーン」の間に妙な間を置くためらいがちなチャイム
訪問者が誰なのかおおよその見当は付くが出る気はない
出る気はないが足音を忍ばせて玄関に行き、ドアスコープ越しに覗いてみるとそこにはためらいがちにうつむく
深淵の姿があった

「お前、何しにきたんだよ……。」
PCデスクを背にしたしりりが椅子に掛けたまま、手持ち無沙汰を紛らすようにギターを爪弾きながら問いかける
半ば強引に押しかけてはみたものの、さすがに気後れして居ずまいを正す深淵
「もう……動画投稿、しないの?」

しりりからの答えはなく、歪んだギターの音だけが室内に響く――――。
「ギターの音、歪んでるね」
「そりゃ、エフェクターかましてるからな」
「深ちゃ、しりり君のクリーントーンが聞きたいな……」
「ああ、それならこんなエフェクターなんか外して……って、ど゙わぁッ!深淵お前!?」

立ち上がってまず最初にスカートのホックを外した
裾を放射状に広げながら足元に向かって滑り落ちるスカート
その中心からそっと脚を抜き取り、一歩踏み出してしりりに歩み寄る深淵
いっさい迷いのない手付きでタイをほどき、ブラウスのボタンに手を掛け襟元から裾に向かって順に外していく
キャミソールの裾を掴んでたくし上げながら、頬が触れ合う距離にまで近付いた深淵がしりりの耳元でささやく
「深ちゃの『クリーントーン』全部見せてあげるから、しりり君も……ね?」
前かがみの姿勢のまま背中に手を回してにっこり微笑む