探検


【バーチャルYoutuber】タ厶antiスレ√675【鍋】

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
2018/12/24(月) 07:16:39.37
!extend:none:none:1000:512
!extend:none:none:1000:512

公式
https://entum.jp
https://twitter.com/entum_info

※前スレ
【バーチャルYoutuber】ENTUM(エンタム)アンチスレ※674【鍋】
https://egg.5ch.net/test/read.cgi/streaming/1545583978/
VIPQ2_EXTDAT: none:none:1000:512:----: EXT was configured
https://twitter.com/5chan_nel (5ch newer account)
2018/12/24(月) 12:12:27.45
>>188
今日はイヴだぞ?
2018/12/24(月) 12:12:35.67
チャイナは銀髪がむちゃくちゃ人気
2018/12/24(月) 12:12:58.48
>>175
あの…クリスマスイブ…
2018/12/24(月) 12:13:05.75
ドル信は独身社畜が多いからな
2018/12/24(月) 12:13:35.42
>>191
ドル部のファンなら尚更集まり良さそうやん
2018/12/24(月) 12:14:15.61
>>191
だからこそ
2018/12/24(月) 12:15:27.17
もう4300集めてるじゃんすごいねw
2018/12/24(月) 12:15:48.15
明日アカリ生か 楽しみだ
2018/12/24(月) 12:16:11.71
4500人…これが独身貴族の成れの果てか…
2018/12/24(月) 12:16:27.06
中国にニーツ出荷して見るか?
2018/12/24(月) 12:16:41.75
ふたふた何焼いてんの?
2018/12/24(月) 12:16:51.74
まぁいいやさん強くね?新人?
2018/12/24(月) 12:17:02.21
独身貴族多い方がスパチャ入れてくれるだろうしいいことじゃないか
2018/12/24(月) 12:17:32.45
さすがドル部ですわw
2018/12/24(月) 12:18:09.60
リア充は生放送自体にハマらないだろ
2018/12/24(月) 12:19:30.42
>>201
たこ焼き
2018/12/24(月) 12:19:35.95
>>202
たこ焼きだぞ
2018/12/24(月) 12:19:52.96
彼女とランチ並び中
2018/12/24(月) 12:20:15.45
>>206
それ、ぴたでもやったやんけ
2018/12/24(月) 12:21:01.68
彼女と一緒にいて5chに書き込むとか病気だろ
2018/12/24(月) 12:22:12.38
実写で焼かないのか
らん以下やん
2018/12/24(月) 12:22:12.62
たこ焼き焼くとかたまきのマネしてんの?天下のドル部が?
2018/12/24(月) 12:22:32.10
>>210
お前は彼女といる時スマホ一切触らないのか?
2018/12/24(月) 12:22:51.73
彼女といてもスマホでソシャゲくらいするし5ch見てても不思議は感じないが
2018/12/24(月) 12:22:57.03
なんか料理配信とかする生主馬鹿にしてなかったけドル信
2018/12/24(月) 12:23:10.15
>>212
ただのSEを流してる
実際に焼いてるか謎
2018/12/24(月) 12:23:25.69
>>214
Vtuberスレに書き込んでるのはちょっと…
2018/12/24(月) 12:23:37.03
>>213
極力触らんし5chに書き込んでるとか知られたくないわ
2018/12/24(月) 12:23:49.93
電脳料理をしてるぞ
2018/12/24(月) 12:23:58.78
>>215
実写の画像写してないからセーフだぞ
2018/12/24(月) 12:24:16.99
>>218
いやレストランとかなら対面だから
見られる心配ないじゃん
2018/12/24(月) 12:24:23.97
ねるちゃんのことは馬鹿にしてた記憶あるな
2018/12/24(月) 12:24:25.54
焼く音SEかよ草
2018/12/24(月) 12:24:57.20
>>220
ドル信はいいのかそれで
2018/12/24(月) 12:25:04.02
これ音がループしてるな
2018/12/24(月) 12:25:36.67
ままごとしてるだけだからな
2018/12/24(月) 12:25:45.87
🌱ホントはポケモン3時間やりたい
2018/12/24(月) 12:25:49.58
>>224
実際には作ってないからセーフ
おままごとみたいな事してる
2018/12/24(月) 12:26:14.16
生主配信やんけと思わせて完全バーチャル料理なのは草
2018/12/24(月) 12:26:15.99
>>215
SE別撮りだから完全バーチャル料理だぞ
2018/12/24(月) 12:26:41.26
バーチャルならままごとでいいじゃん
2018/12/24(月) 12:27:32.78
>>230
クリスマスの昼間から4500人も何聞いてんだ?
2018/12/24(月) 12:27:34.74
めちゃくちゃわらわら沸いてきて草
2018/12/24(月) 12:27:54.55
いや普通に考えておしゅしに火は使わせられないだろ
ねるちゃんみたいな女子力があるとは思えんよ
2018/12/24(月) 12:28:00.27
第二ドルスレじゃん草
2018/12/24(月) 12:28:08.42
5000いくな
2018/12/24(月) 12:28:18.72
もうすぐ5000行きそうじゃんむしろいつもより多くね
2018/12/24(月) 12:28:34.51
>>234
炙りサーモン
2018/12/24(月) 12:28:37.26
生料理配信かよ消えろ
って思ったらおままごと配信かよ
2018/12/24(月) 12:28:41.63
>>235
闇鍋だから配信中なら問題ない
2018/12/24(月) 12:29:02.79
>>234
ああああああああああああああああああ
こいつふたばの配信見てないいいいいいいいいいいいい
2018/12/24(月) 12:29:07.00
>>237
アカリも料理配信するか
2018/12/24(月) 12:29:12.20
この知性が無い感じが最高に嵌るな
まるで小学校低学年の子を持つパパの気持ちになるわ
2018/12/24(月) 12:29:14.24
【緊急悲報】
ふたばたこ焼きお好み焼き焼きそばをご飯で食べる
2018/12/24(月) 12:30:24.66
>>244
その書き方だとごはんがおかずで粉物が主食なのか?
2018/12/24(月) 12:30:29.21
ドルアン民が実況してたら死ね
ドルアン民じゃない奴の実況は百歩譲って許す
2018/12/24(月) 12:30:57.66
>>244
野蛮だな
2018/12/24(月) 12:31:48.62
>>246
アカリ猫宮もっさんソラおじ蜜を登録してるのでタムアン民です
2018/12/24(月) 12:31:57.30
炭水化物x炭水化物!ベストマッチ!
http://livedoor.blogimg.jp/funs/imgs/3/6/36ae303a.jpg
2018/12/24(月) 12:32:01.39
>>243
イヴにその書き込みは中々に破壊力あるな
2018/12/24(月) 12:32:13.37
>>246
ドル部見てないけどイブ配信してるから見ます!
2018/12/24(月) 12:32:24.34
もう昼か
内臓が死んでて起きる気すら無し
2018/12/24(月) 12:32:41.59
>>249
ふたば〜😭
2018/12/24(月) 12:32:50.77
スクリプト荒らしが沸いたらドルアンに行って
向こうに沸いたらこっちにくる流浪の民です
2018/12/24(月) 12:33:05.42
5000行ってるすごいなドル部の集客は
2018/12/24(月) 12:33:07.37
>>248
登録した上でちゃんと見てるなら許す
2018/12/24(月) 12:33:09.99
いや、お好み焼きでご飯は普通だから
2018/12/24(月) 12:33:12.56
>>252
そらとも!?
2018/12/24(月) 12:33:19.03
ふたば5000
アカリ〜😭😭😭
2018/12/24(月) 12:33:38.29
>>257
地方の民か
2018/12/24(月) 12:33:51.92
タムスレ民なら昨日のもっさん見たよな?当然だよな?
2018/12/24(月) 12:34:20.16
ドルアンスレってアニメ実況してる例の画像みたいなのがいっぱいいるってことか
2018/12/24(月) 12:34:21.51
たまき配信してるのに誰も見ないんだな…
2018/12/24(月) 12:34:29.65
>>261
みやぢヱロかった
2018/12/24(月) 12:34:31.59
>>257
お前デブだろ?
2018/12/24(月) 12:34:36.86
>>261
たりめーよ!
2018/12/24(月) 12:35:23.54
>>261
声かわいかったな
2018/12/24(月) 12:35:24.94
エンタムの仲間たまき出てるぞ
スパチャ通ってご祝儀飛んでるぞ
俺にはダンクぐらいしかできない
https://www.youtube.com/watch?v=gTTtUmdUjzg
2018/12/24(月) 12:35:25.95
関西勢すくないのか
2018/12/24(月) 12:35:40.64
>>268
サムネで神楽メア
グロ
2018/12/24(月) 12:35:59.04
>>263
純タムですら観てるやつおらんやろ…
2018/12/24(月) 12:36:09.94
>>268
有償でガワ作成してあげただけで仲間ではありません
2018/12/24(月) 12:36:16.58
>>261
雑な耳かき音声すこ!
2018/12/24(月) 12:36:33.52
b8c99
2018/12/24(月) 12:36:37.85
>>268
気持ちよくダンクできる
2018/12/24(月) 12:36:49.55
がないとオレは思った。オレはノミを握りしめた。そして、いずれを選ぶべきかに尚も迷った。そのとき、ヒメの声がきこえた。「とうとう動かなくなったわ。なんて可愛いのでしょうね。お日さまが、うらやましい。日
本中の野でも里でも町でも、こんな風に死ぬ人をみんな見ていらッしゃるのね」 それをきいているうちにオレの心が変った。このヒメを殺さなければ、チャチな人間世界はもたないのだとオレは思った。 ヒメは無心に
野良を見つめていた。新しいキリキリ舞いを探しているのかも知れなかった。なんて可憐なヒメだろうとオレは思った。そして、心がきまると、オレはフシギにためらわなかった。むしろ強い力がオレを押すように思われ
た。 オレはヒメに歩み寄ると、オレの左手をヒメの左の肩にかけ、だきすくめて、右手のキリを胸にうちこんだ。オレの肩はハアハアと大きな波をうっていたが、ヒメは目をあけてニッコリ笑った。「サヨナラの挨拶を
して、それから殺して下さるものよ。私もサヨナラの挨拶をして、胸を突き刺していただいたのに」 ヒメのツブラな瞳はオレに絶えず、笑みかけていた。 オレはヒメの言う通りだと思った。オレも挨拶がしたかったし
、せめてお詫びの一言も叫んでからヒメを刺すつもりであったが、やっぱりのぼせて、何も言うことができないうちにヒメを刺してしまったのだ。今さら何を言えよう。オレの目に不覚の涙があふれた。 するとヒメはオ
レの手をとり、ニッコリとささやいた。「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天井に蛇を吊して
、いま私を殺したように立派な仕事をして……」 ヒメの目が笑って、とじた。 オレはヒメを抱いたまま気を失って倒れてしまった。
 オレの親方はヒダ随一の名人とうたわれたタクミであったが、夜長の長者に招かれたのは、老病で死期の近づいた時だった。親方は身代りにオレをスイセンして、「これはまだ二十の若者だが、小さいガキのころからオ
レの膝元に育ち、特に仕込んだわけでもないが、オレが工夫の骨法は大過なく会得している奴です。五十年仕込んでも、ダメの奴はダメのものさ。青笠《アオガサ》や古釜《フルカマ》にくらべると巧者ではないかも知れ
ぬが、力のこもった仕事をしますよ。宮を造ればツギ手や仕口にオレも気附かぬ工夫を編みだしたこともあるし、仏像を刻めば、これが小僧の作かと訝かしく思われるほど深いイノチを現します。オレが病気のために余儀
なく此奴を代理に差出すわけではなくて、青笠や古釜と技を競って劣るまいとオレが見込んで差出すものと心得て下さるように」 きいていてオレが呆れてただ目をまるくせずにいられなかったほどの過分の言葉であった
。 オレはそれまで親方にほめられたことは一度もなかった。もっとも、誰をほめたこともない親方ではあったが、それにしても、この突然のホメ言葉はオレをまったく驚愕させた。当のオレがそれほどだから、多くの古
い弟子たちが親方はモウロクして途方もないことを口走ってしまったものだと云いふらしたのは、あながち嫉みのせいだけではなかったのである。 夜長の長者の使者アナマロも兄弟子たちの言い分に理があるようだと考
えた。そこでオレをひそかに別室へよんで、「お前の師匠はモウロクしてあんなことを云ったが、まさかお前は長者の招きに進んで応じるほど向う見ずではあるまいな」 こう云われると、オレはムラムラと腹が立った。
その時まで親方の言葉を疑ったり、自分の腕に不安を感じていたのが一時に掻き消えて、顔に血がこみあげた。「オレの腕じゃア不足なほど、夜長の長者は尊い人ですかい。はばかりながら、オレの刻んだ仏像が不足だと
いう寺は天下に一ツもない筈だ」 オレは目もくらみ耳もふさがり、叫びたてるわが姿をトキをつくるのようだと思ったほどだ。アナマロは苦笑した。「相弟子どもと鎮守のホコラを造るのとはワケがちがうぞ。お前が腕
くらべをするのは、お前の師と並んでヒダの三名人とうたわれている青ガサとフル釜だぞ」「青ガサもフル釜も、親方すらも怖ろしいと思うものか。オレが一心不乱にやれば、オレのイノチがオレの造る寺や仏像に宿るだ
けだ」 アナマロはあわれんで溜息をもらすような面持であったが、どう思い直してか、オレを親方の代りに長者の邸へ連れていった。「キサマは仕合せ者だな。キサマの造った品物がオメガネにかなう筈はないが、日本
中の男という男がまだ見ぬ恋に胸をこがしている夜長姫サマの御身ちかくで暮すことができるのだからさ。せいぜい仕事を長びかせて、一時も長く逗留の工夫をめぐらすがよい。どうせかなわぬ仕事の工夫はいらぬことだ
2018/12/24(月) 12:37:00.48
スクリプト来たぞみんな次に行くぞ!
2018/12/24(月) 12:37:05.88
者もあった。 ヒメはお供え物のカブや菜ッ葉をオレに示して、言った。「これはお前がうけた物よ。おいしく煮てお食べ」 ヒメの顔はニコニコとかがやいていた。オレはヒメがからかいに来たと見て、ムッとした。そ
して答えた。「天下|名題《なだい》のホトケを造ったヒダのタクミはたくさん居りますが、お供え物をいただいた話はききませんや。生き神様のお供え物にきまっているから、おいしく煮ておあがり下さい」 ヒメの笑
顔はオレの言葉にとりあわなかった。ヒメは言った。「耳男よ。お前が造ったバケモノはほんとうにホーソー神を睨み返してくれたのよ。私は毎日楼の上からそれを見ていたわ」 オレは呆れてヒメの笑顔を見つめた。し
かし、ヒメの心はとうてい量りがたいものであった。 ヒメはさらに云った。「耳男よ。お前が楼にあがって私と同じ物を見ていても、お前のバケモノがホーソー神を睨み返してくれるのを見ることができなかったでしょ
うよ。お前の小屋が燃えたときから、お前の目は見えなくなってしまったから。そして、お前がいまお造りのミロクには、お爺さんやお婆さんの頭痛をやわらげる力もないわ」 ヒメは冴え冴えとオレを見つめた。そして
、ふりむいて立去った。オレの手にカブと菜ッ葉がのこっていた。 オレはヒメの魔法にかけられてトリコになってしまったように思った。怖ろしいヒメだと思った。たしかに人力を超えたヒメかも知れぬと思った。しか
し、オレがいま造っているミロクには爺さん婆さんの頭痛をやわらげる力もないとは、どういうことだろう。「あのバケモノには子供を泣かせる力もないが、ミロクには何かがある筈だ。すくなくともオレという人間のタ
マシイがそッくり乗りうつッているだろう」 オレは確信をもってこう云えるように思ったが、オレの確信の根元からゆりうごかしてくずすものはヒメの笑顔であった。オレが見失ってしまったものが確かにどこかにある
ようにも思われて、たよりなくて、ふと、たまらなく切ない思いを感じるようになってしまった。 ホーソー神が通りすぎて五十日もたたぬうちに、今度はちがった疫病が村をこえ里をこえて渡ってきた。夏がきて、熱い
日ざかりがつづいていた。 また人々は日ざかりに雨戸をおろして神仏に祈ってくらした。しかし、ホーソー神の通るあいだ畑を耕していなかったから、今度も畑を耕さないと食べる物が尽きていた。そこで百姓はおのの
きながら野良へでてクワを振りあげ振りおろしたが、朝は元気で出たのが、日ざかりの畑でキリキリ舞いをしたあげく、しばらく畑を這いまわってことぎれる者も少くなかった。 山の下の三ツ又のバケモノのホコラを拝
みにきて、ホコラの前で死んでいた者もあった。「尊いヒメの神よ。悪病を払いたまえ」 長者の門前へきて、こう祈る者もあった。 長者の邸も再び日ざかりに雨戸をとざして、人々は息をころして暮していた。ヒメだ
けが雨戸をあけ、時に楼上から山下の村を眺めて、死者を見るたびに邸内の全ての者にきかせて歩いた。 オレの小屋へきてヒメが云った。「耳男よ。今日は私が何を見たと思う?」 ヒメの目がいつもにくらべて輝きが
深いようでもあった。ヒメは云った。「バケモノのホコラへ拝みにきて、ホコラの前でキリキリ舞いをして、ホコラにとりすがって死んだお婆さんを見たのよ」 オレは云ってやった。「あのバケモノの奴も今度の疫病神
は睨み返すことができませんでしたかい」 ヒメはそれにとりあわず、静かにこう命じた。「耳男よ。裏の山から蛇をとっておいで。大きな袋にいっぱい」 こう命じたが、オレはヒメに命じられては否応もない。黙って
意のままに動くことしかできないのだ。その蛇で何をするつもりだろうという疑いも、ヒメが立去ってからでないとオレの頭に浮かばなかった。 オレは裏の山にわけこんで、あまたの蛇をとった。去年の今ごろも、その
また前の年の今ごろも、オレはこの山で蛇をとったが、となつかしんだが、そのときオレはふと気がついた。 去年の今ごろも、そのまた前の年の今ごろも、オレが蛇とりにこの山をうろついていたのは、ヒメの笑顔に押
されてひるむ心をかきたてようと悪戦苦闘しながらであった。ヒメの笑顔に押されたときには、オレの造りかけのバケモノが腑抜けのように見えた。ノミの跡の全てがムダにしか見えなかった。そして腑抜けのバケモノを
再びマトモに見直す勇気が湧くまでには、この山の蛇の生き血を飲みほしても足りないのではないかと怯えつづけていたものだった。 そのころに比べると、いまのオレはヒメの笑顔に押されるということがない。イヤ、
押されてはいるかも知れぬが、押し返さねばならぬという不安な戦いはない。ヒメの笑顔が押してくるままの力を、オレのノミが素直に表すことができればよいという芸本来の三昧境にひたっているだけのことだ。 いま
2018/12/24(月) 12:37:22.01
して、それから殺して下さるものよ。私もサヨナラの挨拶をして、胸を突き刺していただいたのに」 ヒメのツブラな瞳はオレに絶えず、笑みかけていた。 オレはヒメの言う通りだと思った。オレも挨拶がしたかったし
、せめてお詫びの一言も叫んでからヒメを刺すつもりであったが、やっぱりのぼせて、何も言うことができないうちにヒメを刺してしまったのだ。今さら何を言えよう。オレの目に不覚の涙があふれた。 するとヒメはオ
レの手をとり、ニッコリとささやいた。「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天井に蛇を吊して
、いま私を殺したように立派な仕事をして……」 ヒメの目が笑って、とじた。 オレはヒメを抱いたまま気を失って倒れてしまった。
 オレの親方はヒダ随一の名人とうたわれたタクミであったが、夜長の長者に招かれたのは、老病で死期の近づいた時だった。親方は身代りにオレをスイセンして、「これはまだ二十の若者だが、小さいガキのころからオ
レの膝元に育ち、特に仕込んだわけでもないが、オレが工夫の骨法は大過なく会得している奴です。五十年仕込んでも、ダメの奴はダメのものさ。青笠《アオガサ》や古釜《フルカマ》にくらべると巧者ではないかも知れ
ぬが、力のこもった仕事をしますよ。宮を造ればツギ手や仕口にオレも気附かぬ工夫を編みだしたこともあるし、仏像を刻めば、これが小僧の作かと訝かしく思われるほど深いイノチを現します。オレが病気のために余儀
なく此奴を代理に差出すわけではなくて、青笠や古釜と技を競って劣るまいとオレが見込んで差出すものと心得て下さるように」 きいていてオレが呆れてただ目をまるくせずにいられなかったほどの過分の言葉であった
。 オレはそれまで親方にほめられたことは一度もなかった。もっとも、誰をほめたこともない親方ではあったが、それにしても、この突然のホメ言葉はオレをまったく驚愕させた。当のオレがそれほどだから、多くの古
い弟子たちが親方はモウロクして途方もないことを口走ってしまったものだと云いふらしたのは、あながち嫉みのせいだけではなかったのである。 夜長の長者の使者アナマロも兄弟子たちの言い分に理があるようだと考
えた。そこでオレをひそかに別室へよんで、「お前の師匠はモウロクしてあんなことを云ったが、まさかお前は長者の招きに進んで応じるほど向う見ずではあるまいな」 こう云われると、オレはムラムラと腹が立った。
その時まで親方の言葉を疑ったり、自分の腕に不安を感じていたのが一時に掻き消えて、顔に血がこみあげた。「オレの腕じゃア不足なほど、夜長の長者は尊い人ですかい。はばかりながら、オレの刻んだ仏像が不足だと
いう寺は天下に一ツもない筈だ」 オレは目もくらみ耳もふさがり、叫びたてるわが姿をトキをつくるのようだと思ったほどだ。アナマロは苦笑した。「相弟子どもと鎮守のホコラを造るのとはワケがちがうぞ。お前が腕
くらべをするのは、お前の師と並んでヒダの三名人とうたわれている青ガサとフル釜だぞ」「青ガサもフル釜も、親方すらも怖ろしいと思うものか。オレが一心不乱にやれば、オレのイノチがオレの造る寺や仏像に宿るだ
けだ」 アナマロはあわれんで溜息をもらすような面持であったが、どう思い直してか、オレを親方の代りに長者の邸へ連れていった。「キサマは仕合せ者だな。キサマの造った品物がオメガネにかなう筈はないが、日本
中の男という男がまだ見ぬ恋に胸をこがしている夜長姫サマの御身ちかくで暮すことができるのだからさ。せいぜい仕事を長びかせて、一時も長く逗留の工夫をめぐらすがよい。どうせかなわぬ仕事の工夫はいらぬことだ
」 道々、アナマロはこんなことを云ってオレをイラだたせた。「どうせかなわぬオレを連れて行くことはありますまい」「そこが虫のカゲンだな。キサマは運のいい奴だ」 オレは旅の途中でアナマロに別れて幾度か立
ち帰ろうと思った。しかし、青ガサやフル釜と技を競う名誉がオレを誘惑した。彼らを怖れて逃げたと思われるのが心外であった。オレは自分に云いきかせた。「一心不乱に、オレのイノチを打ちこんだ仕事をやりとげれ
ばそれでいいのだ。目玉がフシアナ同然の奴らのメガネにかなわなくとも、それがなんだ。オレが刻んだ仏像を道のホコラに安置して、その下に穴を掘って、土に埋もれて死ぬだけのことだ」 たしかにオレは生きて帰ら
ぬような悲痛な覚悟を胸にかためていた。つまりは青ガサやフル釜を怖れる心のせいであろう。正直なところ、自信はなかった。 長者の邸へ着いた翌日、アナマロにみちびかれて奥の庭で、長者に会って挨拶した。長者
2018/12/24(月) 12:37:26.93
巡回おつかれや
2018/12/24(月) 12:37:38.29
た昔の大昔の大親の師匠の代から順くりにそう云われてきたのだぞ。大蛇に足をかまれても、目を放すな」 だからオレは夜長ヒメを見つめた。オレは小心のせいか、覚悟をきめてかからなければ人の顔を見つめることが
できなかった。しかし、気おくれをジッと押えて、見つめているうちに次第に平静にかえる満足を感じたとき、オレは親方の教訓の重大な意味が分ったような気がするのだった。のしかかるように見つめ伏せてはダメだ。
その人やその物とともに、ひと色の水のようにすきとおらなければならないのだ。 オレは夜長ヒメを見つめた。ヒメはまだ十三だった。身体はノビノビと高かったが、子供の香がたちこめていた。威厳はあったが、怖ろ
しくはなかった。オレはむしろ張りつめた力がゆるんだような気がしたが、それはオレが負けたせいかも知れない。そして、オレはヒメを見つめていた筈だが、ヒメのうしろに広々とそびえている乗鞍山《ノリクラヤマ》
が後々まで強くしみて残ってしまった。 アナマロはオレを長者にひき合せて、「これが耳男《ミミオ》でございます。若いながらも師の骨法をすべて会得し、さらに独自の工夫も編みだしたほどの師匠まさりで、青ガサ
やフル釜と技を競ってオクレをとるとは思われぬと師が口をきわめてほめたたえたほどのタクミであります」 意外にも殊勝なことを言った。すると長者はうなずいたが、「なるほど、大きな耳だ」 オレの耳を一心に見
つめた。そして、また云った。「大耳は下へ垂れがちなものだが、この耳は上へ立ち、頭よりも高くのびている。兎の耳のようだ。しかし、顔相は、馬だな」 オレの頭に血がさかまいた。オレは人々に耳のことを言われ
た時ほど逆上し、混乱することはない。いかな勇気も決心も、この混乱をふせぐことができないのだ。すべての血が上体にあがり、たちまち汗がしたたった。それはいつものことではあるが、この日の汗はたぐいのないも
のだった。ヒタイも、耳のまわりも、クビ筋も、一時に滝のように汗があふれて流れた。 長者はそれをフシギそうに眺めていた。すると、ヒメが叫んだ。「本当に馬にそッくりだわ。黒い顔が赤くなって、馬の色にそッ
くり」 侍女たちが声をたてて笑った。オレはもう熱湯の釜そのもののようであった。溢れたつ湯気も見えたし、顔もクビも胸も背も、皮膚全体が汗の深い河であった。 けれどもオレはヒメの顔だけは見つめなければい
けないし、目を放してはいけないと思った。一心不乱にそう思い、それを行うために力をつくした。しかし、その努力と、湧き立ち溢れる混乱とは分離して並行し、オレは処置に窮して立ちすくんだ。長い時間が、そして
、どうすることもできない時間がすぎた。オレは突然ふりむいて走っていた。他に適当な行動や落附いた言葉などを発すべきだと思いつきながら、もっとも欲しない、そして思いがけない行動を起してしまったのである。
 オレはオレの部屋の前まで走っていった。それから、門の外まで走って出た。それから歩いたが、また、走った。居たたまらなかったのだ。オレは川の流れに沿うて山の雑木林にわけ入り、滝の下で長い時間岩に腰かけ
ていた。午《ひる》がすぎた。腹がへった。しかし、日が暮れかかるまでは長者の邸へ戻る力が起らなかった。 オレに五六日おくれて青ガサが着いた。また五六日おくれて、フル釜の代りに倅《せがれ》の小釜(チイサ
ガマ)が到着した。それを見ると青ガサは失笑して云った。「馬耳の師匠だけかと思ったら、フル釜もか。この青ガサに勝てぬと見たのは殊勝なことだが、身代りの二人の小者が気の毒だ」 ヒメがオレを馬に見立ててか
ら、人々はオレをウマミミとよぶようになっていた。 オレは青ガサの高慢が憎いと思ったが、だまっていた。オレの肚はきまっていたのだ。ここを死場所と覚悟をきめて一心不乱に仕事に精をうちこむだけだ。 チイサ
釜はオレの七ツ兄だった。彼の父のフル釜も病気と称して倅を代りに差し向けたが、取沙汰では仮病であったと云われていた。使者のアナマロが一番おそく彼を迎えにでかけたので腹を立てたのだそうだ。しかし、チイサ
釜が父に劣らぬタクミであるということはすでに評判があったから、オレの場合のように意外な身代りではなかったのである。 チイサ釜は腕によほどの覚えがあるのか、青ガサの高慢を眉の毛の一筋すらも動かすことな
く聞きながした。そして、青ガサにも、またオレにも、同じように鄭重《ていちょう》に挨拶した。ひどく落附いた奴だと思って薄気味がわるかったが、その後だんだん見ていると、奴はオハヨウ、コンチハ、コンバンハ
、などの挨拶以外には人に話しかけないことが分った。 オレが気がついたと同じことを、青ガサも気がついた。そして彼はチイサ釜に云った。「オメエはどういうわけで挨拶の口上だけはヌカリなく述べやがるんだ。ま
2018/12/24(月) 12:37:54.90
へ拝みに来て死ぬ人もあるのに、野良の人々は無事なのね」 オレは小屋にこもって仕事にふけっているだけだから、邸内の人々とも殆ど交渉がなかったし、まして邸外とは交渉がなかった。だから村里を襲っている疫病
の怖ろしい噂を時たま聞くことがあっても、オレにとっては別天地の出来事で、身にしみる思いに打たれたことはなかった。オレのバケモノが魔よけの神様にまつりあげられ、オレが名人ともてはやされていると聞いても
、それすらも別天地の出来事であった。 オレははじめて高楼から村を眺めた。それは裏の山から村を見下す風景の距離をちぢめただけのものだが、バケモノのホコラにすがりついて死んでいる人の姿を見ると、それもわ
が身にかかわりのないソラゾラしい眺めながらも、人里の哀れさが目にしみもした。あんなバケモノが魔よけの役に立たないのは分りきっているのに、そのホコラにすがりついて死ぬ人があるとは罪な話だ。いッそ焼き払
ってしまえばいいのに、とオレは思った。オレが罪を犯しているような味気ない思いにかられもした。 ヒメは下界の眺めにタンノーして、ふりむいた。そして、オレに命じた。「袋の中の蛇を一匹ずつ生き裂きにして血
をしぼってちょうだい。お前はその血をしぼって、どうしたの?」「オレはチョコにうけて飲みましたよ」「十匹も、二十匹も?」「一度にそうは飲めませんが、飲みたくなけりゃそのへんへぶッかけるだけのことですよ
」「そして裂き殺した蛇を天井に吊るしたのね」「そうですよ」「お前がしたと同じことをしてちょうだい。生き血だけは私が飲みます。早くよ」 ヒメの命令には従う以外に手のないオレであった。オレは生き血をうけ
るチョコや、蛇を天井へ吊るすための道具を運びあげて、袋の蛇を一匹ずつ裂いて生き血をしぼり、順に天井へ吊るした。 オレはまさかと思っていたが、ヒメはたじろぐ色もなく、ニッコリと無邪気に笑って、生き血を
一息にのみほした。それを見るまではさほどのこととは思わなかったが、その時からはあまりの怖ろしさに、蛇をさく馴れた手までが狂いがちであった。 オレも三年の間、数の知れない蛇を裂いて生き血をのみ死体を天
井に逆吊りにしたが、オレが自分ですることだから怖ろしいとも異様とも思わなかった。 ヒメは蛇の生き血をのみ、蛇体を高楼に逆吊りにして、何をするつもりなのだろう。目的の善悪がどうあろうとも、高楼にのぼり
、ためらう色もなくニッコリと蛇の生き血を飲みほすヒメはあまり無邪気で、怖ろしかった。 ヒメは三匹目の生き血までは一息に飲みほした。四匹目からは屋根や床上へまきちらした。 オレが袋の中の蛇をみんな裂い
て吊るし終ると、ヒメは言った。「もう一ッぺん山へ行って袋にいっぱい蛇をとってきてよ。陽のあるうちは、何べんもよ。この天井にいっぱい吊るすまでは、今日も、明日も、明後日も。早く」 もう一度だけ蛇とりに
行ってくると、その日はもうたそがれてしまった。ヒメの笑顔には無念そうな翳がさした。吊るされた蛇と、吊るされていない空間とを、充ち足りたように、また無念げに、ヒメの笑顔はしばし高楼の天井を見上げて動か
なかった。「明日は朝早くから出かけてよ。何べんもね。そして、ドッサリとってちょうだい」 ヒメは心残りげに、たそがれの村を見下した。そして、オレに言った。「ほら。お婆さんの死体を片づけに、ホコラの前に
人が集っているわ。あんなに、たくさんの人が」 ヒメの笑顔はかがやきを増した。「ホーソーの時は、いつもせいぜい二三人の人がションボリ死体を運んでいたのに、今度は人々がまだ生き生きとしているのね。私の目
に見える村の人々がみんなキリキリ舞いをして死んで欲しいわ。その次には私の目に見えない人たちも。畑の人も、野の人も、山の人も、森の人も、家の中の人も、みんな死んで欲しいわ」 オレは冷水をあびせかけられ
たように、すくんで動けなくなってしまった。ヒメの声はすきとおるように静かで無邪気であったから、尚のこと、この上もなく怖ろしいものに思われた。ヒメが蛇の生き血をのみ、蛇の死体を高楼に吊るしているのは、
村の人々がみんな死ぬことを祈っているのだ。 オレは居たたまらずに一散に逃げたいと思いながら、オレの足はすくんでいたし、心もすくんでいた。オレはヒメが憎いとはついぞ思ったことがないが、このヒメが生きて
いるのは怖ろしいということをその時はじめて考えた。 しらじら明けに、ちゃんと目がさめた。ヒメのいいつけが身にしみて、ちょうどその時間に目がさめるほどオレの心は縛られていた。 オレは心の重さにたえがた
かったが、袋を負うて明けきらぬ山へわけこまずにもいられなかった。そして山へわけこむと、オレは蛇をとることに必死であった。少しも早く、少しでも多く、とあせっていた。ヒメの期待に添うてやりたい一念が一途
2018/12/24(月) 12:37:55.67
>>263
ゆゆうたのカキタレとか見るわけないだろ
2018/12/24(月) 12:37:58.91
>>274
荒らしはやめてください!
2018/12/24(月) 12:38:11.34
野良を耕すから、馬の代りに女がハタを織るようだ。オレの国の馬は手にノミを握って大工はするが、ハタは織らねえな。せいぜい、ハタを織ってもらおう。遠路のところ、はなはだ御苦労」 エナコの目がはじかれたよ
うに開いた。そして、静かに立ち上った。長者に軽く目礼し、ズカズカとオレの前へ進んだ。立ち止って、オレを見おろした。むろんオレの目もエナコの顔から放れなかった。 エナコは膳部の横を半周してオレの背後へ
まわった。そして、そッとオレの耳をつまんだ。「そんなことか!……」 と、オレは思った。所詮、先に目を放したお前の負けだと考えた。その瞬間であった。オレは耳に焼かれたような一撃をうけた。前へのめり、膳
部の中に手を突ッこんでしまったことに気がついたのと、人々のざわめきを耳の底に聞きとめたのと同時であった。 オレはふりむいてエナコを見た。エナコの右手は懐剣のサヤを払って握っていたが、その手は静かに下
方に垂れ、ミジンも殺意が見られなかった。エナコがなんとなく用ありげに、不器用に宙に浮かして垂れているのは、左手の方だ。その指につままれている物が何物であるかということにオレは突然気がついた。 オレは
クビをまわしてオレの左の肩を見た。なんとなくそこが変だと思っていたが、肩一面に血でぬれていた。ウスベリの上にも血がしたたっていた。オレは何か忘れていた昔のことを思いだすように、耳の痛みに気がついた。
「これが馬の耳の一ツですよ。他の一ツはあなたの斧でそぎ落して、せいぜい人の耳に似せなさい」 エナコはそぎ落したオレの片耳の上部をオレの酒杯の中へ落して立去った。 それから六日すぎた。 オレたちは邸内
の一部に銘々の小屋をたて、そこに籠って仕事をすることになっていたから、オレも山の木を伐りだしてきて、小屋がけにかかっていた。 オレは蔵の裏の人の立ち入らぬ場所を選んで小屋をつくることにした。そこは一
面に雑草が生え繁り、蛇やクモの棲み家であるから、人々は怖れて近づかぬ場所であった。「なるほど。馬小屋をたてるとすれば、まずこの場所だが、ちと陽当りがわるくはないか」 アナマロがブラリと姿を現して、か
らかった。「馬はカンが強いから、人の姿が近づくと仕事に身が入りません。小屋がけが終って仕事にかかって後は、一切仕事場に立ち入らぬように願います」 オレは高窓を二重造りに仕掛け、戸口にも特別の仕掛けを
施して、仕事場をのぞくことができないように工夫しなければならないのだ。オレの仕事はできあがるまで秘密にしなければならなかった。「ときに馬耳よ。長者とヒメがお召しであるから、斧を持って、おれについてく
るがよい」 アナマロがこう云った。「斧だけでいいんですか」「ウン」「庭木でも伐ろと仰有《おっしゃ》るのかね。斧を使うのもタクミの仕事のうちではあるが、木地屋とタクミは違うものだ。木を叩ッ切るだけなら
、他に適役があらア。つまらねえことでオレの気を散らさねえように願いますよ」 ブツブツ云いながら、手に斧をとってくると、アナマロは妙な目附で上下にオレを見定めたあとで、「まア、坐れ」 彼はこう云って、
まず自分から材木の切れッ端に腰をおろした。オレも差向いに腰をおろした。「馬耳よ。よく聞け。お主《ヌシ》が青ガサやチイサ釜とあくまで腕くらべをしたい気持は殊勝であるが、こんなウチで仕事をしたいとは思う
まい」「どういうわけで!」「フム。よく考えてみよ。お主、耳をそがれて、痛かったろう」「耳の孔にくらべると、耳の笠はよけい物と見えて、血どめに毒ダミの葉のきざんだ奴を松ヤニにまぜて塗りたくッておいたら
、事もなく痛みもとれたし、結構、耳の役にも立つようですよ」「この先、ここに居たところで、お主のためにロクなことは有りやしないぞ。片耳ぐらいで済めばよいが、命にかかわることが起るかも知れぬ。悪いことは
云わぬ。このまま、ここから逃げて帰れ。ここに一袋の黄金がある。お主が三ヵ年働いて立派なミロク像を仕上げたところで、かほど莫大な黄金をいただくわけには参るまい。あとはオレが良いように申上げておくから、
今のうちに早く帰れ」 アナマロの顔は意外に真剣だった。それほどオレが追いだしたいのか。三ヵ年の手当にまさる黄金を与えてまで追いだしたいほど、オレが不要なタクミなのか。こう思うと、怒りがこみあげた。オ
レは叫んだ。「そうですかい。あなた方のお考えじゃア、オレの手はノミやカンナをとるタクミの手じゃアなくて、斧で木を叩ッきるキコリの腕だとお見立てですかい。よかろう。オレは今日かぎりここのウチに雇われた
タクミじゃアありません。だが、この小屋で仕事だけはさせていただきましょう。食うぐらいは自分でやれるから、一切お世話にはなりませんし、一文もいただく必要はありません。オレが勝手に三ヵ年仕事をする分には
2018/12/24(月) 12:38:27.71
だ」 アナマロはオレの両肩に手をかけて、変にシミジミとオレを見つめた。そして云った。「オレの言い方がまずかった。斧だけ持って一しょに参れと申したのは御主人様の言いつけだ。しかし、斧をもって一しょに参
らずに、ただ今すぐにここから逃げよと申すのは、オレだけの言葉だ。イヤ、オレだけではなく、長者も実は内々それを望んでおられる。じゃによって、この一袋の黄金をオレに手渡して、お主を逃がせ、とさとされてい
るのだ。それと申すのが、もしもお主がオレと一しょに斧をもって長者の前へまかりでると、お主のために良からぬことが起るからだ。長者はお主の身のためを考えておられる」 思わせぶりな言葉が、いっそうオレをい
らだたせた。「オレの身のためを思うなら、そのワケをザックバランに言ってもらおうじゃありませんか」「それを言ってやりたいが、言ったが最後タダではすまぬ言葉というものもあるものだ。だが、先程から申す通り
、お主の一命にかかわることが起るかも知れぬ」 オレは即座に肚をきめた。斧をぶらさげて立上った。「お供しましょう」「これさ」「ハッハッハ。ふざけちゃアいけませんや。はばかりながら、ヒダのタクミはガキの
時から仕事に命を打込むものと叩きこまれているのだ。仕事のほかには命をすてる心当りもないが、腕くらべを怖れて逃げだしたと云われるよりは、そッちの方を選ぼうじゃありませんか」「長生きすれば、天下のタクミ
と世にうたわれる名人になる見込みのある奴だが、まだ若いな。一時の恥は、長生きすればそそがれるぞ」「よけいなことは、もう、よしてくれ。オレはここへ来たときから、生きて帰ることは忘れていたのさ」 アナマ
ロはあきらめた。すると、にわかに冷淡だった。「オレにつづいて参れ」 彼は先に立ってズンズン歩いた。 奥の庭へみちびかれた。縁先の土の上にムシロがしかれていた。それがオレの席であった。 オレと向い合せ
にエナコが控えていた。後手にいましめられて、じかに土の上に坐っていた。 オレの跫音《あしおと》をききつけて、エナコは首をあげた。そして、いましめを解けば跳びかかる犬のようにオレを睨んで目を放さなかっ
た。小癪な奴め、とオレは思った。「耳を斬り落されたオレが女を憎むならワケは分るが、女がオレを憎むとはワケが分らないな」 こう考えてオレはふと気がついたが、耳の痛みがとれてからは、この女を思いだしたこ
ともなかった。「考えてみるとフシギだな。オレのようなカンシャク持ちが、オレの耳を斬り落した女を咒《のろ》わないとは奇妙なことだ。オレは誰かに耳を斬り落されたことは考えても、斬り落したのがこの女だと考
えたことはめッたにない。あべこべに、女の奴めがオレを仇のように憎みきっているというのが腑に落ちないぞ」 オレの咒いの一念はあげて魔神を刻むことにこめられているから、小癪な女一匹を考えるヒマがなかった
のだろう。オレは十五の歳に仲間の一人に屋根から突き落されて手と足の骨を折ったことがある。この仲間はササイなことでオレに恨みを持っていたのだ。オレは骨を折ったので三ヵ月ほど大工の仕事はできなかったが、
親方はオレがたった一日といえども仕事を休むことを許さなかった。オレは片手と片足で、欄間のホリモノをきざまなければならなかった。骨折の怪我というものは、夜も眠ることができないほど痛むものだ。オレは泣き
泣きノミをふるッていたが、泣き泣き眠ることができない長夜の苦しみよりも、泣き泣き仕事する日中の凌ぎよいことが分ってきた。折からの満月を幸いに、夜中に起きてノミをふるい、痛さに堪えかねて悶え泣いたこと
もあったし、手をすべらせてモモにノミを突きたててしまったこともあったが、苦しみに超えたものは仕事だけだということを、あの時ほどマザ/\と思い知らされたことはない。片手片足でほった欄間だが、両手両足が
使えるようになってから眺め直して、特に手を入れる必要もなかった。 その時のことが身にしみているから、片耳を斬り落された痛みぐらいは、仕事の励みになっただけだ。今に思い知らせてやるぞと考えた。そして、
いやが上にも怖ろしい魔神の姿を思いめぐらしてゾクゾクしたが、思い知らせてやるのがこの女だとは考えたことがなかったようだ。「オレが女を咒わないのは、ワケが分るフシもあるような気がするが、女がオレを仇の
ように憎むのはワケが分らない。ひょッとすると、長者があんなことを云ったから、オレが女をほしがっていると思って咒っているのかも知れないな」 こう考えると、ワケが分ってきたように思われた。そこでムラムラ
と怒りがこみあげた。バカな女め。キサマ欲しさに仕事をするオレと思うか。連れて帰れと云われても、肩に落ちた毛虫のように手で払って捨てて行くだけのことだ。こう考えたから、オレの心は落附いた。「耳男をつれ
2018/12/24(月) 12:38:43.91
みにきて、ホコラの前で死んでいた者もあった。「尊いヒメの神よ。悪病を払いたまえ」 長者の門前へきて、こう祈る者もあった。 長者の邸も再び日ざかりに雨戸をとざして、人々は息をころして暮していた。ヒメだ
けが雨戸をあけ、時に楼上から山下の村を眺めて、死者を見るたびに邸内の全ての者にきかせて歩いた。 オレの小屋へきてヒメが云った。「耳男よ。今日は私が何を見たと思う?」 ヒメの目がいつもにくらべて輝きが
深いようでもあった。ヒメは云った。「バケモノのホコラへ拝みにきて、ホコラの前でキリキリ舞いをして、ホコラにとりすがって死んだお婆さんを見たのよ」 オレは云ってやった。「あのバケモノの奴も今度の疫病神
は睨み返すことができませんでしたかい」 ヒメはそれにとりあわず、静かにこう命じた。「耳男よ。裏の山から蛇をとっておいで。大きな袋にいっぱい」 こう命じたが、オレはヒメに命じられては否応もない。黙って
意のままに動くことしかできないのだ。その蛇で何をするつもりだろうという疑いも、ヒメが立去ってからでないとオレの頭に浮かばなかった。 オレは裏の山にわけこんで、あまたの蛇をとった。去年の今ごろも、その
また前の年の今ごろも、オレはこの山で蛇をとったが、となつかしんだが、そのときオレはふと気がついた。 去年の今ごろも、そのまた前の年の今ごろも、オレが蛇とりにこの山をうろついていたのは、ヒメの笑顔に押
されてひるむ心をかきたてようと悪戦苦闘しながらであった。ヒメの笑顔に押されたときには、オレの造りかけのバケモノが腑抜けのように見えた。ノミの跡の全てがムダにしか見えなかった。そして腑抜けのバケモノを
再びマトモに見直す勇気が湧くまでには、この山の蛇の生き血を飲みほしても足りないのではないかと怯えつづけていたものだった。 そのころに比べると、いまのオレはヒメの笑顔に押されるということがない。イヤ、
押されてはいるかも知れぬが、押し返さねばならぬという不安な戦いはない。ヒメの笑顔が押してくるままの力を、オレのノミが素直に表すことができればよいという芸本来の三昧境にひたっているだけのことだ。 いま
のオレは素直な心に立っているから、いま造りかけのミロクにもわが身の拙さを嘆く思いは絶えるまもないが、バケモノが腑抜けに見えたほど見るも無慚な嘆きはなかった。バケモノを刻むノミの跡は、ヒメの笑顔に押さ
れては、すべてがムダなものにしか見えなかったものであった。 いまのオレはともかく心に安らぎを得て、素直に芸と戦っているから、去年のオレも今年のオレも変りがないように思っていたが、大そう変っているらし
いな、ということをふと考えた。そして今年のオレの方がすべてに於て立ちまさっていると思った。 オレは大きな袋にいっぱい蛇をつめて戻った。そのふくらみの大きさにヒメの目は無邪気にかがやいた。ヒメは云った
。「袋をもって、楼へ来て」 楼へ登った。ヒメは下を指して云った。「三ツ又の池のほとりにバケモノのホコラがあるでしょう。ホコラにすがりついて死んでいる人の姿が見えるでしょう。お婆さんよ。あそこまで辿り
ついてちょッと拝んでいたと思うと、にわかに立ち上ってキリキリ舞いをはじめたのよ。それからヨタヨタ這いまわって、やっとホコラに手をかけたと思うと動かなくなってしまったわ」 ヒメの目はそこにそそがれて動
かなかった。さらにヒメは下界の諸方に目を転じて飽かず眺めふけった。そして、呟いた。「野良にでて働く人の姿が多いわ。ホーソーの時には野良にでている人の姿が見られなかったものでしたのに。バケモノのホコラ
へ拝みに来て死ぬ人もあるのに、野良の人々は無事なのね」 オレは小屋にこもって仕事にふけっているだけだから、邸内の人々とも殆ど交渉がなかったし、まして邸外とは交渉がなかった。だから村里を襲っている疫病
の怖ろしい噂を時たま聞くことがあっても、オレにとっては別天地の出来事で、身にしみる思いに打たれたことはなかった。オレのバケモノが魔よけの神様にまつりあげられ、オレが名人ともてはやされていると聞いても
、それすらも別天地の出来事であった。 オレははじめて高楼から村を眺めた。それは裏の山から村を見下す風景の距離をちぢめただけのものだが、バケモノのホコラにすがりついて死んでいる人の姿を見ると、それもわ
が身にかかわりのないソラゾラしい眺めながらも、人里の哀れさが目にしみもした。あんなバケモノが魔よけの役に立たないのは分りきっているのに、そのホコラにすがりついて死ぬ人があるとは罪な話だ。いッそ焼き払
ってしまえばいいのに、とオレは思った。オレが罪を犯しているような味気ない思いにかられもした。 ヒメは下界の眺めにタンノーして、ふりむいた。そして、オレに命じた。「袋の中の蛇を一匹ずつ生き裂きにして血
2018/12/24(月) 12:39:00.34
施して、仕事場をのぞくことができないように工夫しなければならないのだ。オレの仕事はできあがるまで秘密にしなければならなかった。「ときに馬耳よ。長者とヒメがお召しであるから、斧を持って、おれについてく
るがよい」 アナマロがこう云った。「斧だけでいいんですか」「ウン」「庭木でも伐ろと仰有《おっしゃ》るのかね。斧を使うのもタクミの仕事のうちではあるが、木地屋とタクミは違うものだ。木を叩ッ切るだけなら
、他に適役があらア。つまらねえことでオレの気を散らさねえように願いますよ」 ブツブツ云いながら、手に斧をとってくると、アナマロは妙な目附で上下にオレを見定めたあとで、「まア、坐れ」 彼はこう云って、
まず自分から材木の切れッ端に腰をおろした。オレも差向いに腰をおろした。「馬耳よ。よく聞け。お主《ヌシ》が青ガサやチイサ釜とあくまで腕くらべをしたい気持は殊勝であるが、こんなウチで仕事をしたいとは思う
まい」「どういうわけで!」「フム。よく考えてみよ。お主、耳をそがれて、痛かったろう」「耳の孔にくらべると、耳の笠はよけい物と見えて、血どめに毒ダミの葉のきざんだ奴を松ヤニにまぜて塗りたくッておいたら
、事もなく痛みもとれたし、結構、耳の役にも立つようですよ」「この先、ここに居たところで、お主のためにロクなことは有りやしないぞ。片耳ぐらいで済めばよいが、命にかかわることが起るかも知れぬ。悪いことは
云わぬ。このまま、ここから逃げて帰れ。ここに一袋の黄金がある。お主が三ヵ年働いて立派なミロク像を仕上げたところで、かほど莫大な黄金をいただくわけには参るまい。あとはオレが良いように申上げておくから、
今のうちに早く帰れ」 アナマロの顔は意外に真剣だった。それほどオレが追いだしたいのか。三ヵ年の手当にまさる黄金を与えてまで追いだしたいほど、オレが不要なタクミなのか。こう思うと、怒りがこみあげた。オ
レは叫んだ。「そうですかい。あなた方のお考えじゃア、オレの手はノミやカンナをとるタクミの手じゃアなくて、斧で木を叩ッきるキコリの腕だとお見立てですかい。よかろう。オレは今日かぎりここのウチに雇われた
タクミじゃアありません。だが、この小屋で仕事だけはさせていただきましょう。食うぐらいは自分でやれるから、一切お世話にはなりませんし、一文もいただく必要はありません。オレが勝手に三ヵ年仕事をする分には
差支えありますまい」「待て。待て。お主はカン違いしているようだ。誰もお主が未熟だから追出そうとは言っておらぬぞ」「斧だけ持って出て行けと云われるからにゃア、ほかに考え様がありますまい」「さ。そのこと
だ」 アナマロはオレの両肩に手をかけて、変にシミジミとオレを見つめた。そして云った。「オレの言い方がまずかった。斧だけ持って一しょに参れと申したのは御主人様の言いつけだ。しかし、斧をもって一しょに参
らずに、ただ今すぐにここから逃げよと申すのは、オレだけの言葉だ。イヤ、オレだけではなく、長者も実は内々それを望んでおられる。じゃによって、この一袋の黄金をオレに手渡して、お主を逃がせ、とさとされてい
るのだ。それと申すのが、もしもお主がオレと一しょに斧をもって長者の前へまかりでると、お主のために良からぬことが起るからだ。長者はお主の身のためを考えておられる」 思わせぶりな言葉が、いっそうオレをい
らだたせた。「オレの身のためを思うなら、そのワケをザックバランに言ってもらおうじゃありませんか」「それを言ってやりたいが、言ったが最後タダではすまぬ言葉というものもあるものだ。だが、先程から申す通り
、お主の一命にかかわることが起るかも知れぬ」 オレは即座に肚をきめた。斧をぶらさげて立上った。「お供しましょう」「これさ」「ハッハッハ。ふざけちゃアいけませんや。はばかりながら、ヒダのタクミはガキの
時から仕事に命を打込むものと叩きこまれているのだ。仕事のほかには命をすてる心当りもないが、腕くらべを怖れて逃げだしたと云われるよりは、そッちの方を選ぼうじゃありませんか」「長生きすれば、天下のタクミ
と世にうたわれる名人になる見込みのある奴だが、まだ若いな。一時の恥は、長生きすればそそがれるぞ」「よけいなことは、もう、よしてくれ。オレはここへ来たときから、生きて帰ることは忘れていたのさ」 アナマ
ロはあきらめた。すると、にわかに冷淡だった。「オレにつづいて参れ」 彼は先に立ってズンズン歩いた。 奥の庭へみちびかれた。縁先の土の上にムシロがしかれていた。それがオレの席であった。 オレと向い合せ
にエナコが控えていた。後手にいましめられて、じかに土の上に坐っていた。 オレの跫音《あしおと》をききつけて、エナコは首をあげた。そして、いましめを解けば跳びかかる犬のようにオレを睨んで目を放さなかっ
2018/12/24(月) 12:39:17.50
できなかった。しかし、気おくれをジッと押えて、見つめているうちに次第に平静にかえる満足を感じたとき、オレは親方の教訓の重大な意味が分ったような気がするのだった。のしかかるように見つめ伏せてはダメだ。
その人やその物とともに、ひと色の水のようにすきとおらなければならないのだ。 オレは夜長ヒメを見つめた。ヒメはまだ十三だった。身体はノビノビと高かったが、子供の香がたちこめていた。威厳はあったが、怖ろ
しくはなかった。オレはむしろ張りつめた力がゆるんだような気がしたが、それはオレが負けたせいかも知れない。そして、オレはヒメを見つめていた筈だが、ヒメのうしろに広々とそびえている乗鞍山《ノリクラヤマ》
2018/12/24(月) 12:39:33.57
るがよい」 アナマロがこう云った。「斧だけでいいんですか」「ウン」「庭木でも伐ろと仰有《おっしゃ》るのかね。斧を使うのもタクミの仕事のうちではあるが、木地屋とタクミは違うものだ。木を叩ッ切るだけなら
、他に適役があらア。つまらねえことでオレの気を散らさねえように願いますよ」 ブツブツ云いながら、手に斧をとってくると、アナマロは妙な目附で上下にオレを見定めたあとで、「まア、坐れ」 彼はこう云って、
まず自分から材木の切れッ端に腰をおろした。オレも差向いに腰をおろした。「馬耳よ。よく聞け。お主《ヌシ》が青ガサやチイサ釜とあくまで腕くらべをしたい気持は殊勝であるが、こんなウチで仕事をしたいとは思う
まい」「どういうわけで!」「フム。よく考えてみよ。お主、耳をそがれて、痛かったろう」「耳の孔にくらべると、耳の笠はよけい物と見えて、血どめに毒ダミの葉のきざんだ奴を松ヤニにまぜて塗りたくッておいたら
、事もなく痛みもとれたし、結構、耳の役にも立つようですよ」「この先、ここに居たところで、お主のためにロクなことは有りやしないぞ。片耳ぐらいで済めばよいが、命にかかわることが起るかも知れぬ。悪いことは
云わぬ。このまま、ここから逃げて帰れ。ここに一袋の黄金がある。お主が三ヵ年働いて立派なミロク像を仕上げたところで、かほど莫大な黄金をいただくわけには参るまい。あとはオレが良いように申上げておくから、
今のうちに早く帰れ」 アナマロの顔は意外に真剣だった。それほどオレが追いだしたいのか。三ヵ年の手当にまさる黄金を与えてまで追いだしたいほど、オレが不要なタクミなのか。こう思うと、怒りがこみあげた。オ
レは叫んだ。「そうですかい。あなた方のお考えじゃア、オレの手はノミやカンナをとるタクミの手じゃアなくて、斧で木を叩ッきるキコリの腕だとお見立てですかい。よかろう。オレは今日かぎりここのウチに雇われた
タクミじゃアありません。だが、この小屋で仕事だけはさせていただきましょう。食うぐらいは自分でやれるから、一切お世話にはなりませんし、一文もいただく必要はありません。オレが勝手に三ヵ年仕事をする分には
差支えありますまい」「待て。待て。お主はカン違いしているようだ。誰もお主が未熟だから追出そうとは言っておらぬぞ」「斧だけ持って出て行けと云われるからにゃア、ほかに考え様がありますまい」「さ。そのこと
だ」 アナマロはオレの両肩に手をかけて、変にシミジミとオレを見つめた。そして云った。「オレの言い方がまずかった。斧だけ持って一しょに参れと申したのは御主人様の言いつけだ。しかし、斧をもって一しょに参
らずに、ただ今すぐにここから逃げよと申すのは、オレだけの言葉だ。イヤ、オレだけではなく、長者も実は内々それを望んでおられる。じゃによって、この一袋の黄金をオレに手渡して、お主を逃がせ、とさとされてい
るのだ。それと申すのが、もしもお主がオレと一しょに斧をもって長者の前へまかりでると、お主のために良からぬことが起るからだ。長者はお主の身のためを考えておられる」 思わせぶりな言葉が、いっそうオレをい
らだたせた。「オレの身のためを思うなら、そのワケをザックバランに言ってもらおうじゃありませんか」「それを言ってやりたいが、言ったが最後タダではすまぬ言葉というものもあるものだ。だが、先程から申す通り
、お主の一命にかかわることが起るかも知れぬ」 オレは即座に肚をきめた。斧をぶらさげて立上った。「お供しましょう」「これさ」「ハッハッハ。ふざけちゃアいけませんや。はばかりながら、ヒダのタクミはガキの
時から仕事に命を打込むものと叩きこまれているのだ。仕事のほかには命をすてる心当りもないが、腕くらべを怖れて逃げだしたと云われるよりは、そッちの方を選ぼうじゃありませんか」「長生きすれば、天下のタクミ
と世にうたわれる名人になる見込みのある奴だが、まだ若いな。一時の恥は、長生きすればそそがれるぞ」「よけいなことは、もう、よしてくれ。オレはここへ来たときから、生きて帰ることは忘れていたのさ」 アナマ
ロはあきらめた。すると、にわかに冷淡だった。「オレにつづいて参れ」 彼は先に立ってズンズン歩いた。 奥の庭へみちびかれた。縁先の土の上にムシロがしかれていた。それがオレの席であった。 オレと向い合せ
にエナコが控えていた。後手にいましめられて、じかに土の上に坐っていた。 オレの跫音《あしおと》をききつけて、エナコは首をあげた。そして、いましめを解けば跳びかかる犬のようにオレを睨んで目を放さなかっ
た。小癪な奴め、とオレは思った。「耳を斬り落されたオレが女を憎むならワケは分るが、女がオレを憎むとはワケが分らないな」 こう考えてオレはふと気がついたが、耳の痛みがとれてからは、この女を思いだしたこ
2018/12/24(月) 12:40:07.12
し、オレがいま造っているミロクには爺さん婆さんの頭痛をやわらげる力もないとは、どういうことだろう。「あのバケモノには子供を泣かせる力もないが、ミロクには何かがある筈だ。すくなくともオレという人間のタ
マシイがそッくり乗りうつッているだろう」 オレは確信をもってこう云えるように思ったが、オレの確信の根元からゆりうごかしてくずすものはヒメの笑顔であった。オレが見失ってしまったものが確かにどこかにある
ようにも思われて、たよりなくて、ふと、たまらなく切ない思いを感じるようになってしまった。 ホーソー神が通りすぎて五十日もたたぬうちに、今度はちがった疫病が村をこえ里をこえて渡ってきた。夏がきて、熱い
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況