「これが一時代を作ったMegwinさんの現在ですよ」
「これじゃ詐欺やな」
「モゴモゴモゴ」
「関根さん...」

関根は事務所を超えた人気YouTuberが出演する大規模イベントのステージにいた。
ステージで一人スポットライトを浴びる彼は、ギャラリーの嘲笑と侮蔑の中に立ち尽くしていた。
渾身のボディアタックも女子中高生中心の会場では空振りに終わり、毎日投稿記録の途絶えたオワコン中年のYouTuberに華やかな舞台は、処刑台のようでもあった。

関根の心が折れる、その瞬間だった。
「ちょっとまてーい!」
暗転し会場にどよめきが走る。
「「「「メグウィン TVアワード2020! 会場は俺たちメグウィンTVがいただいたぜ!」」」」
会場が再び光を取り戻した会場に聞き覚えのある音楽が流れ始めた。
関根、いやMegwinは驚き周囲を見回すと彼を黄金時代のメンバーが囲んでいた。
離れていった社員、いや仲間達が彼に在りし日と同じ笑顔を向けていた。

「バンディ、もう俺なんかに関わるなって言っただろ」
「見捨てられないですよ、関根さん」

「ファルコン、俺が嫌いなんじゃないのかよ」
「勿論嫌いなんで、直接イジリに来ました」

「メテオ、恨んでないのかよ」
「恨むって、俺悪霊か何かと勘違いしてるんじゃないすかー 、ゴーストじゃないんすよ」

「マッシュ...」
「今までの事は、ぜんぶ白紙になったんだよね?わかるね?時計はまた動き出すんだよね?」

沈む船から逃がした筈の社員達、守り切れなかったと思っていた仲間達が、自分を救いに戻って来てくれた。
いつも自分を守ってくれていたのは視聴者数でも法でもなく、仲間である彼らだったとMegwinはずっと前から知っていた。
自分一人が我慢していればいい、そう思って胸の奥にしまい込んでいた、仲間への愛はいつしか目から溢れ出し頬を伝う。
「お前ら...バカヤロウ、バカヤロウ」
「ほら、関根さん泣いてちゃみっともないですよ、お客さんたちを楽しませなきゃ」
Megwinの涙を拭くバンディの手は、とても暖かく大きかったんだとMegwinは知った。
「そうだよなバンディ、俺、渾身のボディアタックをみんなに見せてやるぜMAJIDE」

フワッ。
彼を後ろから何者かが優しく抱きしめた。
「俺、軌道に乗るまでまたメグウィンTVのお世話になるんで、よろしくッ」
マホトだった。彼はメグウィンの耳元で囁くとマイクを手に取り会場のギャラリーにみんなで彼を祝福しようと提案した。
この日の会場は、いや日本全体がメグウィンTVのテーマの大合唱に包まれた。

メーグウィンTV プリーズサブスクライ プリーズサブスクライ
メーグウィンTV プリーズサブスクライ プリーズサブスクライ

五十年後、Megwinこと関根剣はその波乱万丈な生涯に幕を下ろした。
馬主デビュー、ハリウッド映画出演、再婚。
そうして次々に夢を叶えた男の葬儀は、大勢の仲間に見守られながら盛大に行われた。
彼はYouTuber文化の一人として、いずれ未来の歴史教科書に名を刻む事だろう。 完