「闘龍門極第九十六回優勝者はKEN! おめでとうございます〜!」

コロナウイルスが世界を混乱の渦に落としてから二年。
一時は人々の生活を激変させた騒動も日本国内は収束し、スマブラ界隈はかつての盛り上がりを取り戻し始めていた。
以前のような大型大会や海外大会は開催できないが、毎週の町内会、半年に一回の招待制の大会と、オフ大会に不足はない。

現日本最強のプレイヤー“KEN”は今日も平均視聴者数二万を超える闘龍門を優勝し、コメント欄は賞賛の声で溢れかえる。

『KENさん最強〜』
『空上からのコンボ上手すぎww』
『流石日本一や』

KENは慣れた調子で優勝インタビューも終え帰路につく。
優勝した喜びによる笑顔ではなく何故か渋い表情でパソコンの電源をつけると、すぐにyoutubeを開く。
いま破竹の勢いで登録者数を増やすyoutuberザクレイが、満面の笑顔でスマブラのオン対戦をプレイしていた。

「あー! そこで盾か〜! やるな〜〜!」
「好きなスーパーサイヤ人? ナッパです!」
「オンオフとか全然関係ないですよ! 楽しくやれればそれでいいと思いますっ!」

かつては辛辣な物言いと不遜な態度でアンチも多かった彼も、今は誰からも愛される大人気youtuber。
登録者は百万人を超え、ミリオン動画を何本も叩きだし、金も名誉も手に入れた。
誰もが知る有名人であるザクレイとKENは、ともにスマブラをプレイしお互いを高め合った親友だった。
画面の中の彼は笑っている。
誰が見ても幸せに見えるだろう。
しかし、KENは本当の日本一の変わり果てたその姿を見て、大粒の涙を流していた。