初音ミクのおっかけをやって10余年が経過した。当時大学3年生だったオレは「みくみくにしてあげる♪」を聴いて、即効でファンになった。

 元々合コンや女の子とは縁のない生活だったが、それからはミクの為だけに生きてきたようなモンだ。

 毎日ミクの歌を聴き、毎週のようにニコニコ動画やYouTubeで新しい動画をチェックし、もちろん応援のコメントも出しまくって月3回必ずファンアートや詩を投稿した。イベントも全部行った。ライブに全国ツアーで一緒に全国制覇したのも二度や三度じゃない。

 ファンやって二年目、ミクの公式アカウントが俺の投稿に「いいね」してくれた時には嬉しくて本気で涙が出た。人生で最高の喜びだと有頂天になって、帰り道一人で吼えてた。地元の役場の事務に就職した後も、それだけが楽しみで生きてきた。他の事は考えようとしなかった。結婚も、彼女も、友達も、そんなのは関係ない、いらないと思ってた。

 そして一昨年の9月、信じられないものを目にした。「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」というゲームの登場だ。目を疑った。絶対ありえない、絶対ありえない。死んでもありえない。・・・なんであんなゲームが。ふざけんな。どこがいいんだ。ミクと釣り合わない、失礼だ。ふざけんな。ふざけんな。ゲームのキャラクターたちがミクと同じステージに立つなんてありえない。一週間仕事を休んだ。失意の内に数年が経った。もう動画も見てない。会員番号2ケタ前半のファンクラブも辞めた。最近になってようやく、俺も自分の幸せを掴もう…そう思えるようになってきた。

 だけど俺には何も残ってなかった。20代という多感な時期に何もしなかったんだ。当たり前だ。マトモに他人と喋ったのはいつだっただろう。女の子とおしゃべりをしたのはいつだっただろう。恋について、結婚について、そして人生について最後に考えたのはいつだったんだろう。趣味も、特技も、人間性も、協調性も。何もありゃしない。残ったのはブサイクで汚い30代の中身スッカラカンな男。それだけ。こんなのが今更どうやって幸せ掴めってんだ。バーチャルシンガーのおっかけは何も生み出さなかった。それに今まで気づかなかった俺は最高にバカだ。そしてこんなグチをネットでしかこぼせない俺は最高に惨めだ。是非俺を笑ってくれ。蔑んでくれ。そして自分の人生をもう一度考えるキッカケにしてくれ…。