裁判で確定した内容しか断定的に話していなかったり、人から聞いた話を「〜らしい」「〜みたい」と伝聞形式で話したりしていても、名誉毀損罪(または民事上の名誉毀損)は成立する可能性が十分にあります。
「噂話だから」「自分は断定していないから大丈夫」と考えがちですが、日本の法律や過去の裁判例では、表現の語尾や形式よりも「それによって他人の社会的評価が下がったかどうか」が重視されるためです。
具体的な理由は、主に以下の3点に分けられます。

1. 伝聞形式(「〜らしい」)でも社会的評価は下がる

最高裁判所の判例(昭和43年1月18日など)において、「〜らしい」「〜という噂がある」という言い方であっても、それが人の名誉(社会的評価)を傷つけるに足りる事実を流した(事実の摘示)といえると判断されています。
たとえ語尾をぼかしていても、それを聞いた周囲の人が「あの人はそんな悪いことをしたのか(あるいは、した可能性があるのか)」と受け止めれば、その人の社会的評価は低下するためです。

2. 「真実性の証明」の対象が異なる

名誉毀損には「公共の利益に関わることで、目的が公益であり、かつ内容が真実である(または真実と信じるに足りる正当な理由がある)」場合は罰せられないという例外があります(真実性の抗弁)。
しかし、ここで証明しなければならないのは「〜という噂があること(噂が存在するという事実)」ではなく、「噂の内容そのものが真実であること」です。
そのため、「私は人から『あの人が横領したらしい』と聞いたから、聞いた通りに『らしい』と言っただけだ(噂の存在は真実だ)」と主張しても、横領という内容自体が真実でなければ、名誉毀損の責任を免れることはできません。

3. 裁判内容の公表にも制限がある

仮に「裁判で確定した内容」であったとしても、それが個人のプライバシーに深く関わる内容(前科や私生活のトラブルなど)である場合、みだりに公にすると名誉毀損やプライバシー侵害に問われるケースがあります。過去に刑を終えて更生しようとしている人の前科を、正当な理由なく暴露する行為などがこれに該当します。