祖母の引き出しに、返せなかった十二万円のメモを見つけた。「いつでもいいよ」と丸い字。もう渡せない。仏壇の前で封筒を握り、声にならない「ごめんね」が膝に落ちた。遅すぎた春が、静かに始まる。