報道によれば、「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」の遺伝子治療薬「エレビジス」が20日から公的医療保険の対象となり、薬価は3億497万円、国内最高額とされています。対象は3歳以上8歳未満で、歩行可能という条件付き
――時間との闘いの中で「一刻も早く」という声が上がっている、と伝えられました。

私たちがいま問われているのは、価格の大きさに驚くことではなく、この国がいかなる社会であり続けるのか、という覚悟です。難病や希少疾病は、患者数が少ないがゆえに市場原理だけでは十分な研究開発投資が進みにくい領域です。それでも日本は、皆保険制度の下で「命の価値に大小はない」という原則を掲げ、世界でも稀有な水準の医療アクセスを維持してきました。

3億円を超える価格の薬剤を保険で支えるという決断は、財政的には確かに重い。しかし、それは単なるコストではなく、国家としての矜持の表明です。最も弱い立場に置かれた子どもたちを見捨てないという選択こそ、成熟した社会の証明ではないでしょうか。技術立国を標榜する日本が、遺伝子治療という最先端分野において研究開発を後押しし、その成果を自国の患者に届ける――これは医療政策であると同時に、科学技術戦略であり、産業政策でもあります。

もちろん、社会保険財政の持続可能性を冷静に議論することは不可欠です。費用対効果の検証、価格交渉の高度化、国内生産基盤の強化など、制度の精緻化は避けて通れません。しかしそれは「支えない理由」を探すためではなく、「いかに支え続けるか」を設計するための議論であるべきです。

愛国とは声高な排他ではなく、この国に生まれた一人ひとりの命を守る仕組みを磨き上げる不断の努力です。希少疾病への挑戦を国家として後押しし、研究者と企業の果敢な投資を支え、社会全体で保険制度を担う――その連帯こそが、日本の真の強さを形づくります。

「一刻も早く」という切実な声に応える国であり続けるために。私たちは誇りをもって、難病と闘う家族を支える社会を選び取ろうではありませんか。それが、未来の日本への最も力強い投資なのです。

3億円の筋ジス新薬、保険対象に 国内最高額、患者「一刻も早く」
https://news.yahoo.co.jp/articles/b43248808a5f6f84fbc60fd4b27677031de7fd2d