ただ、この制度は消費者のメリットを無視している。そもそも、消費者が交通手段としてタクシーを選ぶ際に、どのような理由があるだろうか。移動はいつでもタクシー、という人は別として、通常は電車・バスを使い、必要に迫られてタクシーを使うという人が多いだろう。終電を逃した、重い荷物を持っているなどの場合に加え、速達性を求めて利用する人は多いだろう。

 それにもかかわらず、時間距離併用運賃は、速達性が得られないときほど運賃が上がる仕組みである。鉄道であれば、速達性があるほど運賃は高い。普通列車ではなく特急を利用すれば特急料金がかかるし、さらに早い新幹線に乗れば、新幹線特急料金を取られる。「ひかり」より速い「のぞみ」はさらに高い。しかもJR特急を例に取ると、2時間以上遅れた場合は特急料金の払い戻しがある。

 一方で、タクシーの場合は、遅くなるほど高くなる――すなわち乗車の効用が低いときほどおカネがかかることになり、鉄道の料金設定とは逆行する。そこに理由があることは前述のとおりだが、ここに消費者がタクシーの利用を敬遠する理由の1つがあるのではないか。

 しかし、時間距離併用運賃だけは、手を入れられずに50年近くそのままである。高度経済成長期とは交通事情もタクシーの需給関係も異なっているというのに。

■初乗り区間で低速になったら、運賃はどうなる?

 加えて、料金の計算方法も不可解だ。私は、時間距離併用運賃の計算方法にひとつ疑問を抱いた。初乗り運賃区間で、渋滞にはまるなど、時速10km以下の走行となった場合はどうなるのかということだ。

 そこで、タクシーに乗る度に運転手に対して質問をした。計30人ほど聞いただろうか。すると、質問自体を理解できない人、初乗り区間では上がらないという人、数分で上がるのでないかという人……回答はさまざまだったが、誰一人明確に説明できなかった。

 タクシー会社はどうか。「大日本帝国」といわれる都内のタクシー会社大手4社、大和自動車交通、日本交通、帝都自動車交通、国際自動車に加え、小田急タクシー、東京MKタクシーに問い合わせてみた。大和、帝都、国際、小田急は乗車すぐに時速10km以下の走行となれば1分30秒(90秒)後にワンメーター上がると回答した。日本交通と東京MKタクシーは6、7分ほど経ったらワンメーター上がると回答したが、その理由は明確に答えられなかった。