水力発電については、もともと自然破壊につながるとのイメージが持たれていますが、風力発電と太陽光発電にはそのようなイメージを持つ人はあまりいません。しかし、実は風力発電と太陽光発電は、水力発電以上の開発面積を必要とします。内山洋司著『エネルギー工学と社会』(放送大学教育振興会)によると、風力発電と太陽光発電は、水力発電と同じ電力量を生み出すのに、水力発電所の5倍の面積が必要であると算出されています。

科学というと、多くの人は今まで不可能だったことを可能にするものというイメージを持っている人が少なくないようです。しかし、実際は私たちが住む世界(宇宙)の制約を探す作業という側面が強くあります。たとえば、万有引力の法則は、私たちが重力の拘束から逃れられないことを示します。たしかに人間は飛行機の発明で空を飛ぶことができるようになりましたが、それは重力以上の揚力を生み出すことによって実現しているのであって、重力をなくしているのではありません。

万有引力の法則が私たちを拘束するように、エネルギー保存則も私たちを拘束しています。私たちにできるのは力学的エネルギーや化学的エネルギー、あるいは核エネルギーを電気エネルギーに変換することだけで、何もないところからエネルギーを新たに生み出すことはできません。自然エネルギーの研究によって、その変換効率を上昇させることはできますが、エネルギー保存則を打ち破ることはできないのです。

ですから、どれほど多額の研究費を投入しても、広大な開発行為なくして、エネルギー密度の低い自然エネルギーで従来の火力発電や原子力発電を代替させることは不可能です。その種の試みは必ず失敗します。

■太陽光パネルの寿命は「基本10年」

ここまで書かれていることを読むと、私が太陽光発電、さらには自然エネルギー全体を敵視しているように見えるかもしれませんが、それは誤解です。

その証拠に、私の家の屋根には太陽光パネルがついています。実は、上で紹介した計算は、東日本大震災のときの計画停電で、せっかく太陽光パネルがあるのだから、その電気を貯めて夜の停電中に使えないかと考えたことがきっかけになります。

最初は、蓄電池の購入を検討しました。しかし、1キロワット時の容量で10万〜20万円もすること、さらに寿命が5年から10年というのを見て断念しました。東日本大震災級の地震が今後10年以内にまた起きる確率はそれほど高いとは思えません。そのために10万円以上を投資する気にはなれませんでした。

そこで、「庭に穴を掘って揚水発電をしてはどうだろう」と考えました。昼の余剰電力で水を上に汲み上げておき、夜にその水を落下させて水力発電をしようと思ったのです。それで計算してみると、3mの高低差の場合、10m×10mのプールに水深約1.2mの水をはることが必要であると算出されました。さすがに、そんな広い庭はありません。

もちろん、水より比重の重い液体、たとえば水銀のプール(!)にすれば、プールの体積は約14分の1で済みますが、当然別の問題が生じます。この出来事をきっかけに、各種自然エネルギーのエネルギー密度を計算したことが、今回の内容の元ネタになっています。

ちなみに、我が家の太陽光発電は設置9年目の2014年から徐々に出力が落ち始め、2018年時点で出力は設置当初の10分の1程度まで落ちています。たまたま、大学の同僚で太陽光発電の専門家がいるので聞いてみたところ、太陽光パネルの寿命は基本10年だそうです。つまり、寿命20年というのは誇大広告なのです。これから太陽光パネルの設置を検討されている方は参考にしてください。

このように、自然エネルギーに対する過大な期待はどれも裏切られる運命にあります。それでも、自然エネルギー礼賛の声は衰えを知りません。自然エネルギーを喧伝している人たちは、果たしてここに書かれたことについて無知なのでしょうか。それとも分かった上でウソをばら撒いているのでしょうか。

実際には、両者が混在しているように見えますが、私は後者の人に遭遇したことがあります。意図的にウソをばら撒くのは、一体どこのどいつなのか。それはさすがにネット上のこんな目立つところでは書けません。答えを知りたい人は、拙著の116〜117ページを立ち読みして、その正体をこっそりご確認いただければ幸いです。