夜空に輝く謎の「赤い点」の正体は、若き日のブラックホールだった
2026.01.22
https://wired.jp/article/little-red-dots-revealed-as-young-black-holes-in-gas-cocoons/
夜空に輝く謎の「赤い点」の正体は、若き日のブラックホールだった
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した画像が2022年7月に初めて公開されて以来、天文学者たちを悩ませてきた謎がある。遠方宇宙の画像に散在する小さな赤い光点、通称「リトル・レッド・ドット(小さな赤い点)」だ。宇宙がわずか数億歳だった時期に現れ、およそ10億年後には消えてしまうとみられるこれらの天体の正体は、初期宇宙の既存モデルでは説明がつかなかったのである。
この赤い点は、当初は130億年の宇宙史を越えて検出できるほど明るい巨大銀河ではないかと考えられた。しかし、そのような大きな銀河はビッグバン直後にはまだ存在していないはずで、これほどの規模に発達するにははるかに長い時間を必要とする。
別の仮説での研究チームは今回、これらの天体から放射される水素原子の発光スペクトルに着目した。宇宙誕生から8億年から20億年ほどの段階にある12個のリトル・レッド・ドットを、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載された分光装置で詳細に分析したのだ。
ブラックホールの質量は、周囲のガスの運動速度を調べることで推定できる。通常、ガスが高速で動いていれば、ドップラー効果によって光の波長は広がって観測される。この場合、光の波長の分布はなだらかな山型になる。
ところがリトル・レッド・ドットから届く光は、そうした通常の形とは明らかに異なっていたという。光の波長の広がり方は山型ではなく、指数関数的に裾野が長く伸びる独特のスペクトルを示していたのだ。これは高密度の電離ガス(プラズマ)の中で光が電子に散乱されることで生じる特徴的なパターンだという。
こうした光の広がり方を詳しく解析した結果、ブラックホール周辺のガスは想像を絶する密度であることがわかった。わずか数光日(1光日は約260億km)から数百光日程度の極めてコンパクトな領域に、膨大な量のガスが詰め込まれているのだ。
特筆すべきは、電子散乱による見かけ上の広がりを取り除くと、本来のガスの運動速度は従来の推定値の約10分の1しかなかった点だ。これはブラックホールの質量の推定値が約100分の1に下方修正されることを意味する。リトル・レッド・ドットは、太陽の10万倍から1,000万倍の質量をもつ初期宇宙で最も軽い部類の超大質量ブラックホールだったのだ。
ガスの繭が解き明かす謎
この観測結果によって、リトル・レッド・ドットをめぐる数々の謎が解き明かされた。まず、ブラックホールの質量が大幅に下方修正されたことで、母銀河との質量比が現在の宇宙にある活動銀河核と同程度になった。これにより、初期宇宙にしては巨大すぎるブラックホールが存在するという矛盾が解消された。