恒星間天体3I/ATLASは毎秒2トンもの水を宇宙空間に噴出していることが判明
公開: 2026-04-21 20:30
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 太陽系外からやってきた恒星間天体「3I/ATLAS」が、毎秒約2トンもの水を宇宙空間に噴き出していることが明らかになった。
 これは、欧州宇宙機関(ESA)の木星探査機JUICEが太陽への最接近時に緊急観測を行い、2026年2月に届いたデータから判明したものだ。
 約100億年前に別の恒星系で誕生したとみられるこの3I/ATLASの水は、太陽系の水とは化学組成が根本的に異なっており、他の星系における惑星形成の手がかりとなる貴重なデータである。

 太陽系に突入後、火星に接近し、2025年10月末に太陽への最接近点である近日点を通過、同年12月に地球に最接近した後、そのまま太陽系の外へと去っていった。
 ガスや塵を噴き出しながら尾を形成するなど彗星に似た活動が観測されたことから「恒星間彗星」と呼ばれることもあるが、その正体はまだ完全には解明されておらず、謎多き天体だ。 
 通常、彗星のような天体は近くの星の熱を受けて初めて表面の氷が液体を経ずに直接気体へと変わる「昇華」が起き、ガスや塵を噴き出す。
 ところが3I/ATLASは太陽に近づくよりずっと前から水を放出し始めていた。
 地球と太陽の距離の3倍も離れた場所にいた2025年10月の時点で、NASAのニール・ゲーレルス・スウィフト天文台がすでに毎秒40kgの水の放出を確認している。
 水の存在を示す化学的な証拠である水酸基(OH)の放射を検出したことによるものだ。
 通常の彗星では考えられない早さで目を覚ましたこの天体を、研究者たちは「全開で放水する消火栓」と表現した。
 これは3I/ATLASの構造が非常にもろく、小さな氷の塊を砕きながら、通常では氷が保てない距離にまで広大なガスのかたまりを形成している可能性を示している。
 木星探査機JUICEの高解像度カメラ「JANUS」が、約1億8000万km離れた場所から彗星「3I/ATLAS」を撮影した画像。彗星が緑色に見えるのは、核のまわりに広がるガスが緑の波長の光を出しているためだ。背景の星は、それぞれの温度の違いによって色が異なって見えている Image credit:ESA
木星探査機JUICEが挑んだ緊急観測
 太陽への近日点通過の前後、地球上の望遠鏡は太陽の強烈な光に邪魔され、まともな観測ができない状況に陥った。
 そこに好機が訪れた。欧州宇宙機関(ESA)の木星探査機JUICEが、深宇宙のちょうどよい位置にいたのだ。
 JUICEは本来、木星の氷衛星であるガニメデ・カリスト・エウロパを探査するために2023年に打ち上げられた探査機で、木星系への到着は2031年の予定だ。
 3I/ATLASの発見を知ったミッションチームは急きょ、搭載する5つの科学機器をこの天体へ向けることを決断した。
 観測の窓は非常に短く、天体からの信号は微弱で、精密に冷却されたカメラにとって熱環境も厳しい条件だった。
 ESAのJUICE計画科学者オリヴィエ・ウィタス氏は、最接近のタイミングにJUICEが近くにいると気づいたとき、一生に一度のデータが得られる機会だと確信したという。
 観測データが地球に届いたのは、それから数か月後の2026年2月のことだ。成功の保証がない困難な観測だったが、結果的にJUICEの木星への旅における最大の収穫の一つとなった。
赤色フィルターと青紫色フィルターで撮影した恒星間天体3I/ATLASの画像。赤色フィルターでは明るいコマの中心が凝縮して見え、まっすぐ下に伸びる尾とぼんやりした尾の2本が確認できる。青紫色フィルターではコマが大きく広がって見えるが淡く、尾は1本のみ明瞭に映っている。フィルターによる見え方の違いは、ガスや塵の粒子が放出・反射する光の波長が異なるためだ。Image credit: ESA
毎秒約2トン吹き出す水。核でなく塵の雲から湧き出ていた
 届いたデータは研究者たちの予想を超えていた。
 JUICEに搭載された赤外線観測装置MAJIS(木星・衛星撮像分光計)が水蒸気と二酸化炭素の放射を繰り返し検出し、彗星の核からの噴出量が毎秒約2トンに達することが判明した。
 イタリア国立天体物理学研究所(INAF)のジュゼッペ・ピッコーニ氏は、これは毎日オリンピックプール約70杯分の水蒸気が宇宙に放出されている量に相当すると説明している。