2026.06.25 11:08

Christine Ro | Contributor

40年前のある日曜日、卵業界の幹部マイケル・I・センサーは、忘れがたい体験をした。

彼は家族とともにカリフォルニア州の大規模な養鶏場を訪れ、孵卵器からヒヨコが生まれてくる様子を子どもたちに見せようとしていた。ヒヨコが孵化すると、作業員がオスとメスを分け、オスのヒヨコをビニール袋を敷いたゴミ箱へ投げ入れていった。センサーはいまでも、「オスのヒヨコでいっぱいになったら、基本的に口を閉じて窒息させていた」という光景を生々しく覚えている。

幼い娘が彼の服を引っ張った。何をしているのか、と不思議がったのだ。「私は娘に、卵産業ではオスは役に立たず、だからこうして処分するのだと説明した。すると、娘は長い間私と口をきかなくなった。本当に個人的にこたえたよ」

米国の卵産業ではいまも、メスのヒヨコは採卵鶏として育てられる一方、オスのヒヨコは大量に殺されている。年間で数億羽に上る。現在の標準的な方法はビニール袋ではなく、回転刃を備えた「マセレーター」と呼ばれる機械を用いることだ。残酷なまでに効率的な工程で、ヒヨコを素早く粉砕する。

だが、こうしたやり方である必要はない。現在、食品会社ヒドゥン・ヴィラ・ランチのシニア・バイスプレジデントを務めるセンサーは、数年前に国際的な業界誌を読んでそのことに気づいた。
複数の国でヒヨコの淘汰(culling)に関する規制が導入されたことを受け、欧州では「インオボ・セクシング(in-ovo sexing、孵化前に卵の中で性別を判定する技術)」と呼ばれる技術が実績を積んでいることを知った。
ドイツは、商業的に成り立つインオボ・セクシング装置が存在する前の2022年に、ヒヨコ淘汰を禁止した。センサーはすぐにドイツへ飛び、新たな機械を視察した。

2025年7月、米国でもついに、インオボ・セクシングで生産された卵が、ヒドゥン・ヴィラ・ランチのブランド「NestFresh(ネストフレッシュ)」から販売され始めた。そして1年後のいま、NestFreshの卵はすべてインオボ・セクシングによる調達に切り替わっている。
センサーは、あの孵化場で娘と向き合った自問の瞬間から40年を経て、この節目を迎えたことに胸を躍らせる。
NestFreshにとどまらず、生産者団体ユナイテッド・エッグ・プロデューサーズも、インオボ・セクシング装置が米国の4つの孵化場に導入されたと報告し、これを「今日の卵生産における最も喫緊の課題の1つに対処する重要な前進」と位置づけた。

「技術は非常に速いスピードで進化しています」と語るのは、動物福祉団体ヒューメイン・リーグのシニア・コーポレート・リレーションズ・マネージャー、リズ・ファーガスだ。手法には画像解析、液体分析、さらには匂いに基づく性別判定まである。卵に穴を開ける侵襲的なものもあれば、開けないものもある。
ファーガスはこう言う。「勝者となるのは、精度、スピード、自動化、コストで先行する技術です。現時点では、AIを活用したMRI(磁気共鳴画像法)画像解析、ハイパースペクトル(超多波長)イメージング、DNA分析システムのいずれも実用可能です」

https://forbesjapan.com/articles/detail/99786?read_more=1

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