//チャネリング効果が作り出す「2つの波源」>>実験の手順はこうだ。まず、シリコン結晶を[110]方向から観察すると、2本の原子列が136pm(1.36Å)の間隔で対を成して並ぶ「ダンベル構造」が見える。研究グループは、STEMの電子プローブをこの原子対の中間に正確に位置づけて入射した。

>>電子が結晶中を進むとき、原子核の引力ポテンシャルが導波路のように働き、電子線は2本の原子列に沿って閉じ込められる。これはチャネリング効果と呼ばれる現象だ。その結果、試料の出口面には136pm離れた2つの微小な波源が形成される。この2つの波源が互いに干渉し、検出器上にしま模様を作り出す。

>>記録した膨大な4D-STEMデータの中から、電子線が原子対の中間に入射した条件の回折パターンだけを選び出し、結晶学的に等価な356個の原子対のパターンを平均した。すると、原子列を結ぶ方向と垂直に、3次の明線まで明瞭な干渉じまが現れた。しまの周期は0.736Åであり、スリット間隔136pmから期待される値と一致する。一方、プローブを1本の原子列の真上に置くと干渉じまは完全に消失した。隣接原子対の「中間」という特別な位置でのみ、二重スリット干渉が成立する。

>>ヤングの実験のスリット間隔が約1mmであるのに対し、本研究のスリット間隔は136pm。スケール比は約7桁、すなわち1000万分の1である。