>>ここからが本研究の核心だ。結晶中の原子は常温でも熱振動している。もし隣り合う2つの原子が互いに無関係にばらばらに揺れていれば、スリット間隔がランダムに揺らぎ、高次の干渉じまは消えるはずだ。実際に、独立等方的な振動を仮定するアインシュタインモデルで計算すると、1次より高次の干渉じまはすべて消失し、実験結果と大きく食い違った。

>>ところが、シリコンのフォノン(格子振動)理論から導いた「協調した変位」をモデルに取り入れると、3次の明線まで含めて実験を精度よく再現できた。隣り合う原子同士が同じ向きに揺れる傾向、すなわち協調熱振動こそが、原子スケールの干渉を保つ物理的な理由だった。

>>この干渉じまは高温でも頑健だった。900K(約627℃)まで加熱しても、2次の明線が明確に観測される。アインシュタインモデルでは900Kで干渉じまは完全に消えるから、この高温での存続も協調振動の効果にほかならない。