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>>その具体例として、研究チームはFOXP1遺伝子を詳しく調べました。FOXP1遺伝子から作られるFOXP1タンパク質は、FOXP4タンパク質とペアになってDNAに結合し、脳の発達に関わる遺伝子の働きを調整します。以下の画像はタンパク質の形を予測するAI「AlphaFold」が示した、FOXP1とFOXP4がペアになった状態です。ベージュがFOXP1、緑がFOXP4、黒と灰色のらせんがDNAを表しており、赤く示された「R513」と「L327」は、遺伝子変異によってFOXP1を構成するアミノ酸が別の種類に置き換わる位置です。
>>FOXP1遺伝子に生じた3種類の遺伝子変異を調べたところ、いずれもFOXP1とFOXP4の結びつきが弱まっていました。このうち病気を引き起こす可能性が高いと予測されていたR513Hという遺伝子変異について、研究チームは発達中の脳への影響を詳しく調べました。研究チームはR513H遺伝子変異を持つヒトiPS細胞から、発達中の前脳を再現する「前脳オルガノイド」を作り、R513H遺伝子変異がないオルガノイドと比較しました。その結果、培養39日目には神経細胞のもとになる神経前駆細胞の割合が減り、大脳皮質の深い部分を構成する神経細胞の割合が増えていました。ところが培養101日目になると、大脳皮質の深い部分を構成する神経細胞の割合はR513H遺伝子変異がないオルガノイドより低くなっていました。
>>以下の画像は左側が培養39日目、右側が培養101日目で、グラフの赤色がR513H遺伝子変異なし、青色がR513H遺伝子変異ありです。「PAX6」は神経前駆細胞、「BCL11B」と「TBR1」は大脳皮質の深い部分を構成する神経細胞の目印を表しています。
>>時期によって神経細胞の増減が逆転した理由について研究チームは、「R513H遺伝子変異によって神経前駆細胞が大脳皮質の神経細胞へ変わる時期が早まったため」だと考えています。発達の早い段階で神経細胞が通常より多く作られた結果、元になる神経前駆細胞が早く減り、後の段階で作られる神経細胞が少なくなったというわけです。