おまえらより当事者の人のがしっかりしてるじゃねえか

 男女どちらのトイレを利用するか−。手術をする前には、ずっと悩んできた。

 髪の毛を肩くらいまで伸ばし、うっすらと化粧をして男子トイレを使っていると、驚いてトイレから出て行く人がいた。隣の小便器に立った高齢の男性が、全身をまじまじとながめ、のぞき込んで性器を確認してきたこともあった。

 「これはあかん」と、多目的トイレを利用するようになったが、トイレを出た後に車いすの人が待っていたことがある。「選択肢が一つしかない人の場所を奪っている」と申し訳なく思った。

 自分の思いだけでなく、他者からも女性として認識されるようになり、映画館のレディースデーに女性料金で鑑賞できるようにもなった頃、「自分を許せた」といういよたさんは、初めて女子トイレを使い始めた。音を立てないように座って用を足し、外見だけでなく所作にも注意を払った。

 「トランスジェンダーがトイレに入ることで、女性や男性をびっくりさせたり、不安にさせたりしてはいけない」

 使う時には、男性なら男性、女性なら女性というように、第三者から見ても外見上の性別が一致している必要があるとし、当事者の集まりでも見た目や使用中の配慮を怠らないよう呼びかけているという。

 LGBT理解増進法の成立過程で、トランスジェンダーの権利を守ることが女性の安全を脅かすとの言説には胸が痛んだ。問題なのは「性別を偽る犯罪者」であり、トランスジェンダーではない。女性との分断をあおる人々に当事者の葛藤がどうすれば届くのか、に頭を悩ませている。

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