高市首相「女だから余分に使う3~4時間」の不誠実 永田町「女性排除」の歴史の残影を思う 北原みのり | AERA DIGITAL

連載:おんなの話はありがたい▶

2026/10/17/ 16:00 北原みのり

 高市首相は10月14日の衆議院予算委員会で、「朝は入浴、朝食の支度、後片付けをし、化粧もする。男性の首相よりは3~4時間、余分に時間を使っているかもしれない」と言っていた。

 いきなり決めつけで悪いが、ウソ、だと思う。

 どう考えても無理でしょう、毎朝のルーティンに3~4時間も使うなんて。

 私自身のことを振り返る。入浴して、朝ご飯を作って、後片付けして、猫の世話をして、ベッドメイキングして、化粧水つけて日焼け止め塗って、眉毛描いて、猫と遊んで・・・と、今せいいっぱい無理に詰め込んで書いているが、それでも平日の朝のルーティーンに4時間かけるなどあり得ない。というか世の中にそんな女、いるか? 夜にクレンジングで化粧を落とす時間を入れたとしても無理。ワンオペで子育てし会社勤めまでしているような女性であればなおさらだ。そんな女性たちにとって、時間は男性よりも常に「足りない」ものであり、「余分に使っている」ものなどではないのだから。

「女だから男よりも時間がかかる」

 なんでこんなこと、高市さんは言ったのだろう。

 そもそもこれは、「私は女なので十二単を着なくてはいけなくて。あれ着るのに時間がかかるんですよ。だからその分、男の人より余分に時間を使っちゃってるんですよ」というような、まるで着なくてもいいものを着るためにかけている時間の話だ。

 一方、おそらく一番時間に追われているであろう子育て中の女性が言う「時間がない」とは、男性パートナーが頼りにならず、またはそもそも存在せず、子育てに1人でかかりきりで、その上、家事全般に目配せしながら、それら全てを「女の君のほうが向いているから」という無言の圧力の中を生きている状態をいう。この違いがわからないで、「私は女性首相だから」とニコリと何か面白いことを言った……みたいな総理大臣の微笑みに、私は国会を見ていて胃が重くなる。無神経です。

高市さんは、今も地方では女性に人気があるという。60代の女性が国のトップに就くことは確かに大変なことだ。並大抵の努力や普通の運では、あの場所には立てない。この社会が女性にどれだけ厳しいかを体験してきた女性たちからすれば、この国のトップが女性であるというその一点だけで、何か誇らしいような気持ちになるのも当然だと思う。そして高市さんが、そんな女性の気持ちに応えたいと思うのもその通りだろう。

 そういう意味で、「女だから男よりも時間がかかる」発言は、男性国会議員への媚びではなく、私は、高市さんが女性有権者を意識した上での媚びだったと思う。高市さんとしては女性を貶める意図はなく、ただ「私は特別な女ではなく、あなたたちと同じように、夫との朝ご飯を作り、後片付けをして、主婦をしている一人の女です」のアピールのために出たテキトーなウソ(←決めつけてごめんなさい)だったのではないか。

 高市さんは実際、庶民的で普通の人なのだろう。だけれど、庶民であることからも普通であることからも、本当は逃れたくて必死だったのかもしれない。女性の痛みや女性の生の声など、永田町での上昇に必要なものではなかったのだろう。今になって女性有権者に媚びたくても媚び方がわからず、「時間」に関する質も意味もまったくずれた発言をしてしまう。「女だから余分に使う3~4時間」発言は、高市さんの不誠実さを率直に表しているように私には感じる。

先日、1924年(大正13年)に収録された「女子政社並政談集会参加制限撤廃運動」という調査報告書を読む機会があった。


(中略) 歴史を振り返れば、女性が参政権を得てからたった80年で、女性が総理大臣になったことは奇跡のような進歩であることは間違いない。それでもこれは、「女性だから男性よりも余分に時間がかかる」と微笑むような女性だったからこそ可能になったことなのだと改めて思わずにはいられない。それは高市さんが男性に媚びてきたとかいう単純な話ではなく、女性に関心がないまま女性であることをアピールできる女性政治家だからこそ突き進むことができたという現実だ。それほどに、永田町の女性排除の歴史の残影は色濃いということなのだろう。

※全文はソースで
https://dot.asahi.com/articles/-/295354